本研究の目的は、ドイツ連邦憲法裁判所の判例及び学説における平等審査手法の在り方を分析し、その内容・特徴を明らかにすることである。この分析を通して、日本における平等審査手法の在り方を明らかにする。上記目的の達成のため、2021年度は、研究実施計画に基づき、以下のように研究を遂行した。 ドイツの平等原則の審査手法について、その歴史的展開を検討・分析した。具体的には、ドイツ連邦憲法裁判所の最初の平等審査手法である恣意禁止原則の由来を検討した。同原則が、プロイセン上級行政裁判所の審査やプロイセン期の議論に由来する、ドイツ固有の審査であるか。それとも、今まで自明視 されてきたように、スイス・アメリカという、外国法に由来する審査であるか。これを明らかにすることを目的として、研究を行なった。 プロイセン上級行政裁判所の判例や同時期の平等学説の議論を概観・分析し、同裁判所が用いる恣意の審査は、連邦憲法裁判所の恣意禁止原則とは異なるものであることを明らかにした(1)。続けて、ヴァイマール期の平等学説の議論状況を概観した(2a)。比較法的手法を用いる当時の平等学説が参照する、スイスの平等判例・学説を検討した。加えて、何故、当時の平等学説が、スイス・アメリカという外国の判例・学説を参照したのかを検討した(2b)。その上で、1926年ドイツ国法学者大会などを素材に、比較法的手法に対する、当時のドイツ学説の反応や裁判所の反応を分析した(2c)。 以上の分析を踏まえ、恣意禁止原則の由来などを明らかにした。上記研究の成果として、論文を執筆し、辛嶋了憲「ドイツ平等審査手法の歴史的展開:恣意禁止原則前史」一橋法学第20巻2号(2021年7月)381-451頁[査読付]を公表した。 上記研究は、公表後、再検討し、博士論文の一部としてもまとめた。同博士論文は、広く公開し、一連の研究成果を社会に還元する予定である。
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