これまでに、グルタチオン濃度変化を可逆的かつ定量的に検出可能なFRET型蛍光プローブQG3.0をモデルとして、このプローブと同様の機能を有するFRET型プローブをTetrazine Click反応で構築する事を試みた。本年度は、蛍光色素部位とTetrazine基までの長さを化学構造的に短く設計した誘導体を合成し、その機能を評価した。具体的には、Rhodamine類のベンゼン環の5位に直接Tetrazine基を導入した緑色色素と、2Me SiR610の5位にエチレンジアミンリンカーを介してTCO基を導入した赤色色素のペアにおいて、これらの色素をin vitroでTetrazine Click反応させたところ、FRET型プローブを形成し、昨年度のリンカー長が長い場合と比較してより高いグルタチオン応答性を示すことが見出された。本検討で得られた知見を利用して、今後より応答性の高いFRET型プローブを構築し、感染細胞や癌細胞などにおけるグルタチオン濃度変化の検出が期待される。 また、本年度は様々な加水分解酵素を標的とした蛍光プローブ群を用いて、治療標的やイメージング標的としてのSARS-CoV-2感染細胞の特異的酵素活性を探索するべくスクリーニング評価を実施した。具体的には、SARS-CoV-2感染培養細胞と非感染培養細胞に対して、上記の蛍光プローブ群を添加し、蛍光強度を比較評価するスクリーニングを行った。その結果、いくつかの蛍光プローブは感染培養細胞特異的な応答を示すことが明らかとなった。また、蛍光アッセイとペプチドマスフィンガープリンティング解析を組み合わせたDEGアッセイ法により、上記のヒットプローブを光らせる新たな標的酵素を複数同定することにも成功した。今後、本検討で見出された標的酵素はSARS-CoV-2感染細胞特異的な診断や治療のバイオマーカー酵素として期待される。
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