研究課題/領域番号 |
19J21213
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研究機関 | 酪農学園大学 |
研究代表者 |
橋本 茉由子 酪農学園大学, 獣医学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | ユビキチン特異的プロテアーゼ / 視床下部 / エネルギー代謝 / ユビキチン |
研究実績の概要 |
今年度は、1.USP2選択的阻害剤を用いて、間脳視床下部のUSP2が交感神経を制御する分子機構を明らかにする。2.神経特異的Usp2ノックアウトマウスの表現型解析を行う。3.血糖変化に反応するUSPの探索と発現局在を解明する。の3点について実行した。
1.USP2選択的阻害剤(ML364)投与による視床下部USP2の阻害が活性酸素(ROS)を蓄積させることで、交感神経を活性化させ、グリコーゲン分解を促進することを見出した。視床下部ニューロンのミトコンドリア活性の変化により末梢臓器のエネルギー代謝が調節されることが知られていため、ミトコンドリアに注目した。ML364により蓄積したROSはミトコンドリア由来であることや、ML364投与によって視床下部のミトコンドリア機能が低下することが明らかとなった。次年度は、視床下部USP2の阻害が引き起こすミトコンドリアの機能低下が交感神経の活性化やその後のグリコーゲン分解の促進と関連するかを調べる。 2.USP2阻害剤の特異性は絶対的でないため、タモキシフェン誘導により神経細胞のUsp2が欠損するNes-cre/ERT2 x Usp2fl/flマウス(以下神経選択的Usp2KOマウス)を作製し、神経USP2のエネルギー代謝に対する役割を調べた。通常飼育時の血糖値や、摂餌量、体温は大きく変化しなかったが、神経選択的Usp2KOマウスを絶食させた後の摂餌量や、絶食、インスリン投与後の血糖値に変化があり、現在再現実験を行っている。 3.血糖変化に反応するUSPを見出すべく、マウスゲノムにコードされる約50種類のUSPについて発現をスクリーニングしており、増減があったUSPについてはin situ hybridization法を用いて発現を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
視床下部へのUSP2阻害剤の投与が交感神経を活性化させる分子機構については概ね明らかにできたと考えている。神経特異的Usp2KOマウスの表現型解析や、Fos-cre/ERT2xR26GRRおよびArc-cre/ERT2xR26GRRレポーターマウスを用いた活性化神経の可視化実験については、タモキシフェン誘導の条件検討に時間を要し本来の計画よりやや遅れているが、現在条件検討が終了しており、本来の計画のもと研究をを進めている。血糖変化に反応するUSPの探索と発現の解明については、現在マウスゲノムにコードされる約50種類のUSPについて発現をスクリーニングしており、in situ hybridizationによる発現解析も行った。当初計画より進んだもの、進まなかったものが有るが総合して考えると、概ね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
視床下部のUSP2を阻害することにより、ミトコンドリア由来のROSが蓄積するということが明らかとなった。ミトコンドリアのROSが蓄積する要因として①ミトコンドリア電子伝達系酵素活性の不均衡、②ミトコンドリアのROS除去系の阻害、が考えられるため、この2点に注目し、視床下部USP2がミトコンドリアROSを制御するメカニズムを調べる。また、Fos-cre/ERT2xR26GRRおよびArc-cre/ERT2xR26GRRレポーターマウスを用いて、視床下部USP2の阻害により活性化した神経細胞を可視化し、USP2が制御する神経ネットワークを明らかにする。 神経選択的Usp2KOマウスについては、“短期エネルギーストレス処置”や、60%kcalの高脂肪餌を給餌する“長期エネルギーストレス処置”を施した後に、エネルギー代謝状態を、摂餌量や体重、血糖値、血中脂質濃度、カテコールアミンとインスリン血中濃度、インスリン感受性や骨格筋、肝臓での遺伝子発現レベルを調べる。
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