研究実績の概要 |
本研究では第9族遷移金属と有機触媒を組み合わせた不斉C-H官能基化法の開発を目指している。ラセミ反応であるCp*Co触媒を用いたピリミジルインドールのC-H結合切断を経るマレイミドへの1,4付加反応[Ackermann, L.; Li, J. et al. Org. Lett. 2017, 19, 3315.]においてウレア, チオウレアを添加し反応性、選択性への影響を調査した。アキラルなウレア触媒を用いた場合、収率、選択性への影響はほとんどなく反応に関与していないことが示唆された。一方でチオウレア触媒を用いると反応はほとんど進行しなかった。チオウレアがコバルトに配位し失活したことが原因であると考えられる。今後の検討はウレア触媒、またはスクアラミド触媒を用いることとした。Cp*Rh触媒を用いたニトロアルケンへの1,4反応[Ellman, J. A. et al. ACS Catal. 2017, 7, 145.]をモデル反応としてCp*金属や有機触媒、基質の検討を行なった。キラルウレア、スクアラミド触媒は比較的安価なシンコニジンから合成している。Cp*Rh触媒存在下、ピラゾールを配向基として用いた場合、室温では反応は進行せず50度まで反応温度を上昇すると目的物が得られ、わずかながら不斉が誘起された。トリアゾールを用いた場合も同様に低い選択性ながらも目的物が得られた。本反応はCp*M(III)金属とキラルウレア触媒を組み合わせた初の不斉反応の例である。
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