研究実績の概要 |
非共有結合性相互作用を利用した不斉C-H官能基化法の開発を目指し、第9族遷移金属とキラルカルボン酸、キラルウレア触媒の組み合わせを検討した。当初のコンセプト通りエナンチオ選択性は発現したものの、その選択性は低い値にとどまった。比較的弱い非共有結合性相互作用では遷移状態における自由度が高く多様な配座を取りうることが低い選択性の原因であると考察した。そこでキラル有機触媒と基質が共有結合を形成するような反応デザインへと 変更した。 種々の有機触媒を検討した結果、キラル求核触媒であるイソカルコゲンウレア触媒を第9族遷移金属と組み合わせることでエナンチオ選択性が発現することを見出した。また様々な配向基を有する基質や求電子剤を検討したところ、ベンジルアミン誘導体と不飽和アシルフルオリドを用いることで七員環ラクタムが高収率かつ高エナンチオ選択的に得られることを見出した。本反応はCp*Rh触媒によるベンジルアミン誘導体オルト位C-H結合の切断により生じる求核的なメタラサイクルと、求核触媒により活性化された求電子剤と1,4-付加反応と、続く分子内アミド形成により目的物が得られる。Cp*Rh触媒を用いることで、強塩基を必要としない温和な条件下、一般的に不活性なC(sp2)-H結合を活性化し求核剤として利用することに成功している。さらにセレンを有するイソカルコゲンウレア触媒を用いることで共有結合に加え、カルコゲン結合を駆使することで活性中間体の立体が厳密に制御され最高99:1 erの選択性を実現している。 以上、当初の予定とはやや異なるものの特性の異なる2つの触媒の協働により既存法とは異なる手法での不斉C-H官能基化法の開発を達成した。
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