研究課題/領域番号 |
19J21256
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
高木 秀隆 広島大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | フォトクロミズム |
研究実績の概要 |
これまでの研究からフォトクロミズム(PC)状態では、ITO基板のインジウムが還元されて金属結晶を形成していることが確認されており、二層間での電子の移動がPCの発現に寄与していると考えられている。この還元について試料内部の深さ方向の還元の度合いを調べるため、本年度の初めにX線光電子分光(XPS)をスパッタリングと併用して用いて、界面を中心に結合状態の分析を行った。その結果、当初の予想通りITOの還元は界面付近で起こっていること、加熱によってそれらが再び酸化物の状態になること、MTOとITOのバンド構造の相対的な関係などが分かった。これによってMTOからITOへの電子の移動によって還元が起こるという還元過程の裏付けがとれたほか、可逆性はUVによる還元と加熱による酸化によって成り立っているとことが分かった。 一方で蓄電性能に関してはPC状態の試料にp型半導体層として酸化ニッケル層を製膜して充放電試験を行った。しかしながら、蓄電性能は確認されず、非常に弱いコンデンサ的特性を示すのみであった。この原因を調査するため電子顕微鏡やXPS、抵抗測定などを行った結果、MTO層の均一性が悪く、紫外線照射によって多数の穴状の欠陥が形成されMTO層を挟む上下の層が電気的に導通し、MTO層に電圧が印加されない状態であることが分かった。 そこでMTO層の製膜条件を様々に変更し膜の均一性とUV耐性を評価したが現時点では効果的な条件はまだ見つかっていない。またMTO層はスピンコート法で作成しているが、その他の方法としてディップコート法や共沈殿法を試みたが、これらの製膜方法でも満足のいく膜は得られていない。ここをどう乗り換えるかが来年度の大きな課題であると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
フォトクロミズムの原理的な方面は順調に分析も進んでいたが、MTO層の均一性の悪さと紫外線によって多数の欠陥が形成されるという当初予想していなかった問題が発生し、この解決が容易ではないと考えられるため結果として進捗は遅れている状況となってしまった。
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今後の研究の推進方策 |
今後はMTO層を層として維持したままPC状態とし、充放電試験を行うことが最も重要な目標となる。そこでこれまではPCが起こる範囲内でしか条件を変えていなかったものを、その条件から外れていても、つまりPCが起こることが確認できていない条件や製膜方法も試みる予定である。これはMTO層の均一性や欠陥の問題が解決されなければ蓄電性能は再現できないためであるが、PCが起こる条件やその過程がある程度明らかになっているため、製膜条件や方法を大きく変えても最終的な膜を分析することによってPCが起こる膜に調整可能だと考えているためである。すなわち種々の方法を試し、均一で緻密なMTO層を作製し、その後そのMTO層の分析を行いPCが起こる結晶性や組成、バンド構造に近づけてゆく。 また充放電試験の際にMTO層の上に製膜するp型半導体として酸化ニッケルを用いているが、加熱するとPC状態でなくなってしまうので非加熱で作成しているため結晶性が悪い。よってPCが消えない程度で加熱する機能や、その他組成比を変えたり不純物を少なくするためスパッタ装置の改良も行う予定である。これにより蓄電性能を再現するにあたって各層の問題点が解決され、蓄電性能を再現する予定である。
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