研究実績の概要 |
本年度は蓄電性能の検討を行った。まずは積層構造 : NiO(酸化ニッケル)/MTO(マグネシウムとスズの酸化物)/金属層(In, Sn)/ITOを作製し改めて充放電試験を行ったが蓄電性能は確認できなかった。原因としてフォトクロミズムの発現と同時にMTO層にピンホールのような欠陥ができることと、非加熱プロセスでの製膜ゆえにNiO層にひび割れのような欠陥ができており、それらを通して電極間で導通が起こってしまったことが上げられるが、これらを完全に抑制することはできなかった。 そこでフォトクロミズムの結果をふまえて電池として機能するための仮説を立て、それに基づいて各層の検証・開発を行うというアプローチに変更した。立てた仮説はMTOが固体電解質でNiOが正極、フォトクロミズムの結果界面に析出した金属が負極として機能すれば蓄電性能を示すというものである。これはフォトクロミズムの結果負極が生成されることを意味しているため、着色と蓄電の関連性がよく説明されている。さらに本研究で明らかとなった他のフォトクロミズムを示す組み合わせの中から適当な材料を選択することで、蓄電性能の再現およびその後の性能向上に資するものであると考えている。 この仮説に沿って、正負極間に十分なエネルギー差があり電池反応が起こるのかということと、固体電解質に相当する部分がイオン伝導性を有しているかどうかの2点を検証した。イオン伝導性はインピーダンス測定法を用いて評価した。電池反応はスズの電解質溶液を用意し、そこでNiOとSnを電極とした充放電試験を行うことで調べた。結果としては、何らかの電池反応を確認できたが、容量は非常に小さく、充放電後の電極の分析から酸化ニッケルが関与している可能性は低いと考えられる。また本研究で行った範囲では固体電解質に相当するMTO層のイオン伝導性を確認するには至らなかった。
|