研究課題/領域番号 |
19J21335
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研究機関 | 岐阜薬科大学 |
研究代表者 |
堀江 哲寛 岐阜薬科大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | エネルギー代謝 / 肥満 / レプチン受容体 / 神経細胞 / Erk5 |
研究実績の概要 |
近年、肥満が世界的な問題となっており、革新的な抗肥満薬の開発が求められている。そのためには、細胞レベルでの肥満形成メカニズムの解明が必須であるものの、その全容は未だ明らかとなっていない。 Extracellular signal-regulated kinase 5(Erk5)はMitogen-activated protein kinase(MAPK)ファミリーに属するセリン/スレオニンキナーゼの一種である。Erk5は細胞の増殖・分化などを調節しており、エネルギー代謝調節にも重要な役割を果たしていることが期待される。 これまでに我々は、エネルギー代謝調節に重要なレプチン受容体陽性神経細胞でErk5を欠損させたマウスが、雌性でのみ肥満を呈すること、またこのマウスが耐糖能の悪化を示すことを明らかにしてきた。本年度はErk5シグナルの上流・下流にどのような因子が存在するか検討を行った。既報より、神経細胞特異的インスリン受容体欠損マウスが雌性のみ肥満を呈することが明らかとなっている。このことから、本遺伝子改変マウスが肥満を呈するメカニズムにインスリンシグナルが関与していることが予想された。そこで、本遺伝子改変マウスにインスリンを投与し、視床下部神経細胞におけるErk5のリン酸化レベルを評価したところ、有意な上昇が認められた。したがって、Erk5シグナルは視床下部神経細胞におけるインスリンシグナルを媒介している可能性が示唆された。 さらに、本検討で得られた試験がヒトにも当てはまるかを検討すべく、オンラインデータベース上のデータより、肥満患者由来iPS細胞を用いたRNA-seqデータの解析を行った。その結果、健常者(非肥満)群と肥満群との間でErk5の発現に有意な差は認められなかった。ただし、本データは性別を分けていないことなどを考慮すべきである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究成果から、レプチン受容体陽性神経細胞におけるErk5シグナルは、インスリンシグナルを媒介する形で肥満形成に寄与している可能性が示唆された。このことから、「レプチン受容体陽性神経細胞におけるErk5の重要性の一端を明らかにする」という本年度の目標をある程度達成することができたと考えられることから「進展」と認められる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である来年度については、Creリコンビナーゼ存在下でErk5を発現させることができるAAVベクターを作製し、本遺伝子改変マウスの視床下部に投与することで肥満が改善されるかどうか、遺伝学的な検討を実施することを考えている。また、Erk5阻害剤を投与することで肥満を呈するかどうかという薬理学的実験も併せて実施することで、本研究成果と臨床とをつなげることができるデータを蓄積していく予定である。
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