前年度までにMIG-seq法に基づく集団遺伝学的・系統学的解析によって明らかにしたインド太平洋広域のアオサンゴ属の系統地理パターンについて、第一著者として査読付き国際学術誌(Frontiers in Marine Science)へ公表するとともに、前年度から延期されていた国際学会(ICRS2021)で口頭発表を行った。また本研究過程で、サンゴ礁に生息する同一のアオサンゴ集団内で生じる配偶子・幼生分散距離推定を目的に、MIG-seq解析およびマイクロサテライト解析による空間自己相関分析を行った結果、アオサンゴは同一個体群内でも狭い空間範囲で強い遺伝構造を有し、配偶子・幼生の分散範囲は先行研究の野外実測データとほぼ一致する約400m以内に限られることを遺伝学的にも裏付けた。この結果は、底生性海洋生物種の野外における幼生分散実測値と空間遺伝構造学的推定値を検証した初の研究例であり、共同第一著者として査読付き国際学術誌(Frontiers in Marine Science)へ公表した。
生物時計遺伝子に関連するアオサンゴ種分化の分子機構解明研究については、初年度に実施した予備実験以降、収束しないコロナ感染拡大や現地の研究協力機関の受け入れ制限や判断を受け、前年度に引き続き、最終年度である今年度内も沖縄県での現地フィールド調査および飼育実験が実施できなかった。その結果、網羅的な発現遺伝解析に必要十分量のサンプルが確保できず、本研究の目的達成の鍵となるアオサンゴの生物時計遺伝子群の同定および発現動態解明にまで至らなかった。
最終年度の研究成果の公表については、上記の第一著者としての査読付き国際学術誌2報に加え、共著者として査読付き国際学術誌3報を公表し、計5報の論文をリリースした。学会発表は、上記の第一著者としての国際学会発表1つに加え、共著者として国内学会発表1つを行った。
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