研究課題/領域番号 |
19J21344
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岡本 幸平 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | Coronal Mass Ejection / Solar flare |
研究実績の概要 |
令和二年度は、昨年度決定した太陽表側の太陽フレア由来のニュートリノ探索時間幅の結果を元に太陽表面のうち地球から見えない側(太陽裏側)で発生した太陽フレアについてニュートリノ探索のための時間幅を決定した。 研究計画段階では太陽裏側の観測を行なっているSTEREO衛星のEUVによる観測結果を元に太陽フレアの選定と時間幅の決定を行う予定であった。しかし、STEREO衛星が太陽裏側の観測を始めたのは2011年ごろであり、スーパーカミオカンデ検出器のデータ取得期間である1996年からの2011年頃までの太陽フレアについて体系的な探索時間幅の決定が行えないため、Coronal Mass Ejection(CME)を用いた太陽フレアの選定と時間幅の決定方法に切り替えた。CMEは太陽フレアに伴うプラズマの放出現象でありSOHO衛星のLarge Angle and Spectrometric Coronagraph experiment(LASCO)によって観測されている。LASCOによる観測データは1996年から2021年現在まで蓄積されており、スーパーカミオカンデ実験のデータ取得期間中の太陽フレアについて情報を得ることができる。CMEの情報を使用した太陽フレアの選定とニュートリノ探索のための時間幅の決定には光学的情報と違った手法を用いる必要があった。具体的な手法は省略するが、CMEの速さと太陽表側で発生した太陽フレアの規模の関係から、CMEの速さが2000 km/s以上の太陽裏側のフレアに対象を絞ることを決めた。 また、CMEが到達した位置、正確には太陽半径の何倍の距離に到達したかとそのとき時刻からCMEの放出開始時刻を推定し、それに対して太陽表側の太陽フレアに対して光学的観測を基に決めた時間幅を適用しCMEの放出開始時刻の前後約1時間を探索範囲とした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要でも述べたが、研究計画段階では太陽裏側の観測を行なっているSTEREO衛星のEUVによる観測結果を元に太陽フレアの選定と時間幅の決定を行う予定であった。しかし、STEREO衛星が太陽裏側の観測を始めたのは2011年ごろであり、スーパーカミオカンデ検出器のデータ取得期間である1996年からの2011年頃までの太陽フレアについて体系的な探索時間幅の決定が行えないため、Coronal Mass Ejection(CME)を用いた太陽フレアの選定と時間幅の決定方法に切り替えた。 当初予定していたような光子の観測結果の利用ではなくなったため、太陽フレアとCMEの関係性、ニュートリノが地球に飛来する時間差などについての文献調査、妥当性の確認などの作業が加わった。そのため当初の計画以上の進捗はないが、研究計画では太陽裏側からの太陽フレアニュートリノ探索を行うための時間幅の設定、太陽フレアの選定を行う予定であり、それは達成された。
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今後の研究の推進方策 |
太陽フレアニュートリノの探索時間、太陽フレアの選定が完了したため、スーパーカミオカンデ検出器において、太陽フレアによってニュートリノ事象のレートが有意に増加しているかどうかを調べる。その結果、太陽フレアニュートリノ事象が得られた場合にはエネルギースペクトル解析等によって太陽フレアにおけるプロトンのエネルギースペクトルの推定と他の光学的観測結果との比較を行う。もしも太陽フレアニュートリノ事象が得られなかった場合には、ニュートリノのフルエンスリミットを算出し、太陽フレアニュートリノの観測可能性を示唆する理論に制限を設ける。これらの結果を得るためにスーパーカミオカンデ検出器のニュートリノ事象の検出効率を見直すなども行う。 以上の結果を、論文誌に投稿する。また、太陽フレアニュートリノ探索の研究全体を博士論文にまとめる。
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