昨年度までの研究では、BaSi2太陽電池の新規構造としてワイドギャップn型半導体とのヘテロ接合を検討し、ヘテロ界面におけるキャリアの再結合を防ぐ目的で、界面層の挿入を検討した。本年は引き続き、Zn1-xGexOy(ZGO)界面層に注目し、BaSi2との界面特性を調査した。 まず、ZGO薄膜をスパッタ法により堆積し、堆積温度が特性に与える影響を調査した。Zn組成は、基板温度が増加するにしたがって減少した。これは、Znの蒸気圧がGeに比べて大きく、堆積中および堆積後に、成膜された膜からZnが優先的に再蒸発したためであると考えられる。Ge組成から算出した電子親和力は3.2から2.9 eVまで変化した。これらの値は、BaSi2に対して小さなSpike型のバンドオフセットとなるため、再結合割合が小さいZGO/BaSi2ヘテロ界面を形成するのに適しているといえる。また、ZGO膜のバンドギャップは4-5 eVの範囲にあり、太陽光を透過するのに十分な大きさであった。以上より、50 °Cで成膜し、Ge組成が0.66のとき、界面層に最も適したバンドアライメントが得られることがわかった。 次に、ZGO/BaSi2積層構造を作製し、界面反応やパッシベーション効果について調査した。分光感度特性は、従来のパッシベーション膜であるa-Siを用いた試料と比較して、300-600 nmの短波長領域で分光感度が増加した。短波長領域におけるBaSi2の光吸収係数は非常に大きいため、ZGOキャップにより、表面の再結合が抑制されている可能性が高い。XPSによる調査の結果、ZGOキャップ時は、BaSi2最表面の酸化が抑制されることがわかった。以上の結果から、ZGOはBaSi2表面のパッシベーション層として機能し、同時にp-BaSi2層からZGO層を介した電子輸送を妨げないとわかった。
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