研究課題/領域番号 |
19J21422
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
鶴見 周摩 中央大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | 乳児 / 注意 |
研究実績の概要 |
視覚的注意の発達過程を調べたこれまでの研究は、主に空間的・物体的側面に焦点をあてており、時間的な側面については未知の部分が多い。本研究では、高速逐次視覚提示課題を用いて、乳児の視覚的注意の時間的側面を検討した。 1.乳児が100msで提示される刺激系列の中から標的である正立顔を検出できるのかを高速逐次視覚課題を用いて検討した。実験では、5-6、7-8ヶ月児それぞれ20名を対象に、正立あるいは倒立顔が含まれる刺激系列を左右に対提示し、乳児の注視時間を測定した。結果、7-8ヶ月児のみ正立顔を含む刺激系列を選好した。この結果は、100msという短時間であっても、複数の画像の中から特定の標的(顔)を検出できることを示唆している。本研究の成果は、査読付き学術雑誌Journal of Experimental Child Psychology誌に掲載された。 2.乳児が刺激系列中に提示される顔を特定の個人の顔として同定できるのかを検討した。7-8ヶ月児20名を対象に、2名の女性顔のうち1名の正立顔あるいは倒立顔を含む100msの刺激系列を提示し、1名の女性顔を学習させた。その後、テスト試行で、学習させた女性顔と新規のもう1名の女性顔を対提示し、新規の女性顔に対する選好が見られるかを調べた。実験の結果、正立顔を学習した際にはテスト試行で新規の女性顔に対する選好がみられ、倒立顔を学習させた際にはテスト試行において新規選好がみられなかった。これは、正立顔の同定ができ、倒立顔では顔の倒立効果が生じたことで倒立顔の同定が損なわれたことを示唆している。本研究の成果は、査読付き学術雑誌Journal of Experimental Child Psychology誌に掲載された。また、本研究成果に関して、第38回日本基礎心理学会若手オーラルセッションにて、The Best Presenterを受賞した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高速逐次視覚提示課題を1歳未満の乳児に応用できることに成功し、その成果が国際学術誌(Journal of Experimental Child Psychology)に掲載された。これにより、成人で多く調べられている注意・意識研究を乳児に応用できる可能性を示すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、より視覚的注意の時間的側面を明らかにするために、成人で報告されている注意の瞬き現象が乳児で見られるかを検討する。具体的には、刺激系列中に2名の女性顔を提示し、乳児に学習させる。その後、学習した女性顔と新規の顔を対提示し、新規顔に対する選好がみられるか調べる。得られた研究成果については、国内外の学会において発表を行い、年度中の論文投稿を予定している。
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