リソソームは酸性加水分解酵素を含むオルガネラで、エンドサイトーシスやオートファジーにより膜内に取り込まれた生体分子の分解に関与している。このた め、リソソームの分解活性を適切に保つことは、細胞内の恒常性の維持に不可欠である。特に、オートファジーが亢進し、リソソームへ多くの基質が流れ込む栄 養飢餓時には、リソソームの分解能も亢進していると考えられる。しかしながら、これまで飢餓によるリソソームの分解能の調節機構はほとんど分かっていな い。低分子量Gタンパク質Rab7の欠損細胞の解析を通して、栄養飢餓により、リソソームの分解能が急速に亢進する現象を独自に見出した。本研究では、このRab7 欠損細胞をモデル系に用いて、新規リソソームの活性調節機構の解明を目指す。前年度までに、栄養飢餓によりオートファジー経路の最終段階(オートリソソー ムの分解・再生過程)が促進されることを見出している。さらに、オートファジー経路だけでなく、エンドサイトーシス経路も栄養飢餓により促進されることを 見出している。本年度は、その分子メカニズムにアプローチするため、リソソーム内腔の酸性化を制御するプロトンポンプ・V-ATPaseに着目した。V-ATPaseの活 性は、細胞質中に存在するV1サブユニットとリソソーム膜に局在するV0サブユニットの複合体形成により制御される。そこで蛍光タンパク質を付加したV1、V0サ ブユニットを発現する細胞株の樹立に成功し、栄養条件、飢餓条件における複合体の形成能を評価できる実験系を構築した。来年度以降の解析によって、栄養条 件に依存した複合体の形成能の変化について解析が進展するものと期待される。
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