太陽系の地球型惑星の中でも灼熱乾燥の金星と温暖湿潤な地球、寒冷乾燥の火星はまるで異なる表層環境を持つ。本研究課題の目的は惑星集積・分化過程においてどのようにコア・マントル中の揮発性元素量、大気組成、表層水量が決定されたのかを明らかにすることで地球型惑星の表層環境の起源を解明することである。 本研究課題で中心的に取り組んできた地球揮発性元素組成の起源に関する研究成果を論文にまとめ国際学術雑誌 Scientific Reportsより出版した。本論文では昨年度までに構築した地球集積期の主要揮発性元素存在量進化の理論モデルを用いて、地球の全集積過程に渡る揮発性元素の獲得・分配・散逸過程の振る舞いを調べた。計算の結果、地球の構成材料となったと考えられるコンドライト母天体に対し相対的に炭素や窒素に枯渇した現在の地球の揮発性元素組成は、集積過程において炭素は主に金属コアへ分配され、窒素は主に後期天体集積期の衝突に伴う大気散逸によって宇宙空間へ失われたことによって説明できることを示した。 最終年度である令和3年度は、任意の軌道・サイズを持つ地球型惑星の集積進化を追跡できるよう、マグマオーシャンの熱進化モデルを新たに構築した。このモデルは惑星集積期に形成されるマグマオーシャンが様々なタイムスケールで固化する過程での表層・内部リザーバ間元素分配計算を可能にする。特にマグマオーシャンの冷却速度は惑星軌道に強く依存するため、様々な軌道を持つ惑星の初期進化を理解するため非常に重要である。我々は、地球型惑星集積期に惑星に出入りする熱収支を考慮し、各時刻のマグマオーシャン深さを計算する内部構造進化モデルを完成させた。このモデルを用いて地球型惑星集積期における水や炭素、窒素など惑星表層環境を決定づける揮発性元素の供給・分配・散逸の振る舞いを詳細に調査し、結果については現在論文にまとめて投稿準備中である。
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