光沢感知覚は高輝度領域からのみならず,低輝度領域からでも知覚可能であることを多様な反射特性・形状・照明環境の物理パラメータ条件でレンダリングしたコンピュータグラフィックス(CG)画像を用いて示した.また,低輝度領域由来の光沢感を知覚するための画像特徴として,輝度成分の高空間周波数帯域のサブバンドコントラストが重要な役割を果たしていることを発見した(Journal of Vision誌). 光沢感知覚における輝度の高空間周波数帯域の寄与をより深く理解するために,高輝度領域由来の光沢感と低輝度高輝度由来の光沢感では,手がかりとなる空間周波数が異なるのかどうかについて検討した.その結果,高輝度領域由来の光沢感も低輝度領域由来の光沢感も高空間周波数のサブバンドコントラストを手がかりとする応答方略に違いはないが,低輝度領域由来の光沢感の場合は高輝度領域由来の光沢感よりも幅広い空間周波数のサブバンドコントラストを手がかりとしていることを発見した(Frontiers in Psychology誌). 光沢感のみならず半透明感という質感の知覚メカニズムについても検討を進めた.物理的には全く光を透過しない物体画像であっても,陰影成分が持つ形状の振幅や空間周波数が光沢成分が持つそれらに対して相対的に低くなるような合成画像を作ることで半透明感を生み出す錯視を発見した.また,画像特徴を用いた回帰分析により,この半透明錯視の知覚において,画像の光沢成分と陰影成分の輝度方位分布の異方性の不一致が強い寄与を果たしていることを発見した(Vision Research誌にて査読中).
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