| 研究課題/領域番号 |
19J21506
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| 研究機関 | 東京大学 |
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研究代表者 |
武内 今日子 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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| 研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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| キーワード | カテゴリー / 自己 / トランスジェンダー / Xジェンダー / 性的マイノリティ / ジェンダー / セクシュアリティ |
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| 研究実績の概要 |
本研究の目的は、性的少数者をあらわすカテゴリーがどのように細分化されながら当事者や専門家によって用いられ、それらが自己や他者の理解に役立てられているのかを明らかにすることにある。特に、広い意味でのトランスジェンダー者をめぐる、性別違和や性同一性障害、トランスジェンダー、Xジェンダー等のカテゴリーが用いられる仕方に焦点を当て、ミニコミ誌やウェブ上の語り、専門家による言説、インタビューで得られた語りを分析していく。分析は、カテゴリーが人びとに規範をもたらしたり、自己を説明するための言説的資源となったりする仕方に着目して行われる。このような視点に立つことは、カテゴリー集団を自明なものとせず、必ずしもカテゴリーに同一化しない人びとの多様な実践を捉えるうえで意義をもつ。
インタビュー調査に関しては、まず関西でのインタビュー調査を進め、第1に、関西の自助グループにおいて1990年代末頃から2000年代初めにかけて、性同一性障害医療に当事者がどのようにアクセスできたのか、医療情報はどのようにやり取りされていたのかを探った。第2に、男でも女でもない性自認を指すXジェンダーが、関西の自助グループにおいてなぜ名乗られていたのかを、性同一性障害などの他のカテゴリーのもつ規範や自助グループでの実践から明らかにした。加えて、関西の自助グループ以外の全国のグループや、女装コミュニティ、ニューハーフのコミュニティで活動していた人びとにもインタビューを行うことで、コミュニティごとに異なるカテゴリー運用がなされていることが示唆された。資料収集に関しても、インタビュー協力者から譲ってもらうなどの仕方で進められ、いくつかの重要な資料を収集することができた。
今後は、カテゴリー化に関する理論の整理や、インターネット上の言説の分析をさらに進めていく。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
調査に関してはおおむね順調に進展していると言える。理由としてまず、インタビュー調査を関西の自助グループ関係者に対して継続的に進め、他のコミュニティに属する人たちに対しても広げていったことで、場によって異なるカテゴリー運用を探ることができた。また、ミニコミ誌の収集も継続的におこない、特定の地域に留まらない、時期によって異なるカテゴリー運用のあり方を探る作業も進めていった。特にXジェンダーの運用に関する分析結果は、今年出版予定の論文にまとめられた。ただし、トランスジェンダーやXジェンダーなどの性別違和をめぐるカテゴリーが2000年代に広まっていった過程を調査しきれなかった点には限界がある。
加えて、理論的枠組みに関する検討はいまだ不十分であった。これに関しては、レイベリング論、認知的視座に立つ研究、I.ハッキングの議論、オーラルヒストリーに関する文献を再検討し、理論的視座を定めていく作業が必要である。
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| 今後の研究の推進方策 |
今後は、以下3点の課題に取り組んでいく。第1に、インタビュー調査に関しては、前年度に調査しきれなかった、トランスジェンダーやXジェンダーなどの性別違和をめぐるカテゴリーが2000年代に広まっていった過程を探る。これは、インタビュー調査対象者をミクシイでのやり取りに詳しいレズビアンやバイセクシュアル、トランスジェンダー者にも広げることで手がかりを得たい。加えて、調査対象者が言及した個人サイトの言説において、いかなるカテゴリー運用がなされているかを検討する。その際、ウェブ上の言説を調査するうえでいかなる倫理的対応が必要なのかということに関して、文献を検討する必要がある。
第2に、トランスジェンダーのカテゴリー運用に、性役割や性自認、性的指向などの概念が導入された仕方がどのように関わるのかをさらに検討する。この作業は新たに調査対象を広げるよりも、これまでに収集してきたゲイやトランスジェンダーに関する文献資料を詳細に読み込むことを中心に進め、関連する医学書や大衆メディア言説を収集する。
第3に、理論的枠組みの不十分な点を修正する。カテゴリーに着目した理論的視座として、レイベリング論、認知的研究、概念分析等の議論も併せて再検討し、研究全体の理論的枠組みを設定していくことが必要となる。加えて、ナラティブ論の議論を整理し、自己をカテゴリーによって位置づける仕方のみならず、他者への自己呈示においてカテゴリーが用いられる仕方を整理する。
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