研究課題
本研究では、化合物半導体表面上への重元素擬一次元鎖を作製によるRashba効果による巨大スピン偏極擬一次元電子状態を実現と、その電子状態のフェルミ準位制御によって同系の新奇電子物性の発現を目的としている。初年度である本年度は、重元素擬一次元鎖作製に基板として用いている化合物半導体について、表面科学的手法である希ガススパッタリングとアニール処理による基板表面の元素組成比操作によってその上に作製した擬一次元鎖のフェルミ準位制御が可能か試みた。角度分解光電子分光(ARPES)によるバンド構造観測の結果、劈開法により清浄化した基板を用いた場合は、擬一次元鎖由来のスピン偏極擬一次元電子状態はフェルミ準位を横切らず半導体的であったのに対し、スパッタリングとアニールによって清浄化した基板の場合、スピン偏極擬一次元電子状態がホールドーピングされ、ARPESによってフェルミ準位を明確に横切る様子が観測された。すなわち、同手法によるフェルミ準位制御が可能であることがわかった。また、フェルミ準位シフトの起源について、内殻光電子分光を用いて解析した結果、基板表面の元素組成比が劈開法とスパッタリングとアニールでは変化していることがわかり、これによってホールドーピングが生じていることを明らかにした。本成果については論文を投稿・発表を行った。並行して、重元素擬一次元鎖のスピン偏極電子構造について、レーザーを光源とした高分解能スピン分解ARPES実験とバンド計算を組み合わせて詳細に解析を行っている。現在までのところ、擬一次元鎖の低対称原子構造に由来した特異なスピンテクスチャを示すという興味深い結果を得ており、今後さらに解析を進める。
2: おおむね順調に進展している
表面科学的手法によるホールドーピングによって、スピン偏極電子状態の金属化に成功したため、ほぼ順調に進展していると判断する。
今年度は、表面科学的手法によってスピン偏極擬一次元電子状態の金属化に成功したため、計画を前倒しして、同基板を用いたスピン伝導測定を目標とする。さらに、擬一次元鎖の詳細なスピン偏極電子状態の解析を進める。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件)
Physical Review Materials
巻: 3 ページ: 126001-126001
https://doi.org/10.1103/PhysRevMaterials.3.126001