本年度は甲殻類の内在性ウイルス配列探索と解析を中心に行った。 甲殻類複数種の全ゲノムショットガンシーケンスを行い、甲殻類ゲノム中の内在性ウイルス配列を計22本得た。比較解析の結果、宿主ゲノム中への組み込みはニマウイルス科内で広く生じており、とりわけクルマエビ類の内在性ウイルスからなる系統がニマウイルス科でもっとも初期に分岐したことが分かった。内在性ニマウイルスは、甲殻類ゲノム中の反復領域に選択的に組み込まれており、また宿主から獲得した複数の遺伝子をイントロンを保持したまま保有していた。ニマウイルス科の姉妹群とみられる、陸生甲殻類から見出されたウイルス配列も、クルマエビ類の内在性ウイルスと類似した特徴を示した。このことから、宿主ゲノム中への組み込みはニマウイルス科の祖先から受け継がれた性質であることが示唆された。 以上のことを踏まえると、甲殻類ゲノム中の内在性ニマウイルスは、宿主ゲノム中に自らを挿入し、親から子へ垂直伝播することで自己複製を図る、トランスポゾンに似たライフスタイルをとっていると考えられた。
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