研究課題
2019年4月から2020年2月の11か月に渡り、アメリカ航空宇宙局ジェット推進研究所(NASA JPL)で共同研究活動を行った。JPLでは複数ロボットを強調させて未知の地下空間を探査するロボットの技術開発を行うプロジェクトに参加し、本研究で着目しているUWB通信機を用いたロボット位置推定技術の研究開発に取り組んだ。JPLでの研究活動を通して、複数ロボットの状態推定にUWB通信機の測距情報を用いる際にどういったことが問題になるか、またそれをどのように解決するべきか、この二点に関して実際のロボットを使用して知見を得ることができた。2020年度はこれらの知見を本研究の対象である宇宙機編隊飛行の航法アルゴリズムに応用し、ロボティクス分野の最先端技術を取り入れた航法システムの提案につなげていく予定である。なお、JPLで行った研究活動の成果に関しては、ジャーナル投稿・論文発表を2020年度中に行う予定である。また宇宙機間の相互通信という観点では、衛星間のデータ通信速度が相対位置・速度推定に大きな影響を与えることを明らかにした。その上で、より精密な解析を行うため、宇宙機間相互通信をメッシュネットワークを用いて模擬するシミュレータの開発を、共同研究という形で開始した。2019年度はシミュレータの初期実装までを終えることができたため、2020年度より随時改修を加えながら本格的に稼働させる予定である。さらに宇宙機編隊飛行の航法アルゴリズムに造詣の深いJPLのロボティクス研究者と協力関係を築くことができた。現地滞在中からマルチエージェントシステムの状態推定に関する理論的な議論を隔週で行い、本研究の理論的な要素を深める上で非常に有意義な助言を受けることができた。帰国後も継続して連絡を取りあっており、隔週で遠隔でのミーティングを行っている。
2: おおむね順調に進展している
本研究は大きく分けて、(1)宇宙機間の相対航法、(2)宇宙機間の相互通信、(3)UWB通信機を用いた実機試験での検証、の3項目からなる。(1)に関して、測距データの統合方法や位置推定手法など、複数の代表的な手法を適用し、それぞれの持つ問題点などを明らかにすることができた。またJPLの研究協力者との議論等を通して、それらの問題点対して有効な新手法をいくつか考案することができ、検証を行う段階まで議論を深めることができた。(2)に関して、相互通信速度と宇宙機の相対位置・速度推定にとても強い結びつきがあることをシミュレーションを通して明らかにすることができた。(3)に関して、JPLでの共同研究を通じて、ハードウェア・ソフトウェア共にUWB通信機の使用方法、使用上の特徴等、様々な知見を得ることができた。以上から、本研究は現状おおむね順調に進展していると考えている。2019年度は相対航法の理論構築、シミュレータ作成、また海外での長期研究活動を通じた研究者としての能力開発に注力したため、学会等での研究成果発表を十分行うことができなかった。2020年度は積極的に研究成果を発表していく予定である。
本研究は大きく分けて、(1)宇宙機間の相対航法、(2)宇宙機間の相互通信、(3)UWB通信機を用いた実機試験での検証、の3項目からなる。(1)に関して、2019年度に引き続き、相対航法アルゴリズムの理論構築を行う。2019年度の活動では、実際にシミュレータ上で代表的な既存手法を宇宙機大規模編隊飛行の相対航法問題に適用し、それぞれの問題点を定量的に評価することができた。またそれらを解決する手法の理論構築をある程度進めることができた。本年度はその新規手法の理論構築を完了させると同時に、シミュレータ上に組み込むことでその有用性を定量的に評価する予定である。(2)に関して、2019年度に引き続き、相互通信シミュレータの研究開発を継続する。相対航法の相互通信に対する依存性をより正確に評価するためには、現状の相互通信シミュレータをより現実に即したものに改良必要があるため、まずはシミュレータの高性能化に注力する。また(1)のシミュレータと組み合わせることで、(1)で構築した航法アルゴリズムの新規手法が相互通信速度にどのような影響を受けるか、定量的に評価する予定である。(3)に関して、UWB通信機の実機を用いた相対航法精度評価を行う予定である。2019年度の研究活動を通じて、すでにUWB通信機に関する基本的な開発は完了しているため、2020年度は実際の宇宙機での使用環境模擬に注力する。また2019年度の研究成果を発表するために、2020年度は積極的に学会やジャーナルに参加・投稿していく予定である。
すべて 2020
すべて 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)