研究課題/領域番号 |
19J21529
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
大矢 貴史 早稲田大学, 理工学術院, 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
|
キーワード | フレキシブルエレクトロニクス / 薬効評価システム / 創薬研究 / 心筋細胞組織 / 生体情報計測 |
研究実績の概要 |
本研究は、高精度な薬効評価システムを確立するために、ヒトiPS由来心筋細胞の動きに追従可能であり、心筋細胞組織の状態を評価可能な薄膜エレクトロニクスの開発を目的とした。薄膜エレクトロニクスの膜厚を検討し、500 nmの厚さの薄膜エレクトロニクスであれば、心筋細胞組織の拍動を完全に止めることなく、肉眼で観察可能な拍動をすることを確認した。また、細胞外電位計測システムの改良により、安定した細胞外電位の計測を実現した。測定される細胞外電位のクオリティは、電極のクオリティにも依存はするが、T波の検出が可能であり、薬剤の催不整脈性の評価に利用可能であると考えられる。現在本エレクトロニクスを利用した薬効評価試験を実施中であり、良好な計画が得られつつある。 また、マイクロ加工を施したエレクトロニクス(スマートエレクトロニクスシート)関しても開発を行っており、作製プロセスの確立を完了した。現在スマートエレクトロニクスシートの機械的な特性、電気的特性の評価を行っており、マイクロ加工を施すことで、柔軟性が大幅に向上することを確認した。心筋細胞組織とスマートエレクトロニクスシートの融合に関しては、無加工のエレクトロニクスに比べ、細胞接着性が劣るため、本課題の解決が重要であると考えている。現在、マイクロ構造の大きさや配置に注目をし、通常の薄膜エレクトロニクスシートと同様に細胞組織との融合が容易なエレクトロニクスの開発を予定している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、マイクロ加工を施したフレキシブルエレクトロニクスを利用して、ヒトiPS細胞由来心筋細胞組織の生体情報を高精度にモニタリングする手法の確立、および、薬効評価システムへの応用研究を行うものである。当初の予定通り、マイクロ加工を施したスマートエレクトロニクスシートの作製手法の確立に関しては達成している。また、機械特性の評価をするための装置を開発し、評価試験を行った結果、柔軟性の大幅な向上が確認された。また、ヒトiPS細胞由来心筋細胞組織の、細胞外電位を安定的に計測手法の確立も達成済みであり、順調に研究は進展していると考えられる。 また、現在、投稿論文としてまとめられるだけの研究成果が蓄積されており、論文執筆中である。
|
今後の研究の推進方策 |
スマートエレクトロニクスシートのマイクロ構造のサイズや配置に注目をした研究を行う。現在開発中のスマートエレクトロニクスシートは、柔軟性は非常に高いが、細胞組織との接着面積が少なく、親和性は高くない。この親和性の問題を解決するために、マイクロ構造のサイズや配置の検討を行い、十分な柔軟性を持ちつつも、親和性が高いスマートエレクトロニクスシートの開発に取り組む予定である。 また、細胞外電位だけでなく、心筋細胞組織の機械的な動きも評価可能なシステムの開発にも着手しており、良好な結果が得られつつある。開発したシステムを利用して、心臓の電気的・機械的な相関が明らかになることが予想され、創薬研究において重要な知見が得られるシステムになることが予想される。本システムを利用し、複数回の投薬実験を行った上で、投稿論文としてまとめることを予定している。
|