研究課題/領域番号 |
19J21537
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
萩原 雄貴 北海道大学, 理学院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | 流体包有物 / ラマン分光 / レーザー加熱 / 有限要素法 |
研究実績の概要 |
流体・メルト・鉱物包有物のラマン分光分析により,包有物トラップ時のホスト鉱物を取り巻く環境の物理化学的条件を直接知ることが可能である.しかし,励起レーザーによる包有物の局所的な温度上昇のために,ピーク位置などのラマン分光特性が変化し,その影響を補正しない場合には系統的な誤差や不正確な結論を導いてしまう可能性がある.レーザー加熱の影響は無視できないにもかかわらず,包有物の加熱速度(℃/mW)は未解明のままであった.ここでは,実験条件や鉱物特性,包有物の形状などの様々なパラメータが包有物の加熱速度にどのような影響を与えるかを評価するために,2つの独立した実験と熱輸送シミュレーションを用いて加熱速度を決定した.レーザー加熱に影響を与える実験パラメータを決定するために,かんらん石・直方輝石・単斜輝石・スピネル・石英中の計21個のCO2-rich流体包有物の加熱速度を測定した.その結果,スピネルの加熱速度が最も高く(約6℃/mW),石英の加熱速度が最も低い(約1×10-2℃/mW)ことが明らかになり,ホスト鉱物の吸光係数(スピネル=20,石英=0.02cm-1)が加熱速度と線形に相関し,ホスト鉱物の吸収係数が包有物の吸光係数よりも大きい場合に最も影響を与えるパラメータであるというこれまでの推論やシミュレーション結果と一致した.さらに,包有物の大きさと深さが加熱速度に与える影響は小さいが,ホスト鉱物の厚さと半径は加熱速度に大きな影響を与えることがわかった.このことは,ある試料で分析する包有物の大きさと深さの選択は,レーザー加熱によるラマンデータの系統的な誤差の原因にはならないが,試料作成時にある程度調整できるホスト鉱物の半径と厚さは,試料間の系統的な誤差の原因になり得ることを示唆している.従って包有物のラマン分光分析から信頼性の高いデータを得るためには,加熱の影響を補正する必要がある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ほぼ計画通りに進めることができている.
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定通りに進める.地質圧力計の開発のため,有限要素法による変形のシミュレーションを取り入れる.
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