研究課題/領域番号 |
19J21542
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中西 智也 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | 脊髄損傷 / 力調節課題 / 脳再組織化 / MRI / 義足 / 視覚障がい者 |
研究実績の概要 |
本研究は、障がい者スポーツを実施することによる運動機能の適応と伴う脳構造・機能の再組織化を明らかにすることを目的としている。当該年度は、新型コロナウイルス感染症予防の観点から、一部の対象者を変更(脳血管障害者を対象とする予定であったが、視覚障がい者へと変更)したものの、研究自体は想定以上に早く進み、次年度に計画していた成果発表(国際誌への論文投稿)を前倒しで行うことができた。主な実施内容は以下の3点である。 ①脊髄損傷者を対象とした研究研究の成果発表:脊髄損傷者は上肢筋機能地図が健常者よりも拡張し、力調節中は効率のよい神経活動が生じていることを明らかにした。また、運動野-上頭頂小葉、運動野-小脳の機能的結合性が健常者よりも高まっていたことが要因であることを突き止めた。2019年度にすでに国際誌へ論文が掲載されていたが、2020年度に新たに国際誌1報、国内誌1報の論文を発表した。 ②下肢切断者を対象としたMultimodal MRIの撮像と論文執筆:当初の計画通り、約30名の下肢切断者のMultimodal MRI計測を実施した。義足競技歴が長いほど、断端部制御時に両側運動野および同側運動前野が動員されることを明らかにし、当初は2021年度の実施を予定していた、論文執筆および国際誌への投稿が完了した。 ③視覚障がい者を対象としたMultimodal MRIの撮像:当初は脳血管障害者を対象とする計画であったが、感染症の蔓延により、脳血管障害者は感染時のリスクが高いことから、協力団体から参加辞退の申し出があった。新たに研究参加者を募集し、視覚障がい者が集うチームから協力を得られたため、対象を変更し、Multimodal MRIの計測を進めた。2020年度中に11名の計測が完了した。2021年に被験者を追加しつつ、論文投稿を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
感染症の影響により一部対象者の変更を行ったものの、初年度に計画を前倒すことができたため、その流れを踏襲し、計画より速いペースでの進行ができている。論文数も2年間で3報が公表され、さらに1報が査読中、2報が今後執筆予定であり、アウトリーチ活動やメディア掲載もされたことから、十分な研究成果の公表ができていると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は投稿中の1本の論文についてなるべく早い掲載を目標とする。また、実施している視覚障がい者の計測を早期に終了し、研究計画の実験部分の早期完了を目指す。2021年度は切断者、視覚障碍者に関する論文を新たに2報執筆・投稿予定であり、早期に取り掛かる。同時に積極的なアウトリーチ活動を継続する。本研究は障がい者スポーツを切り口としているが、障がい者理解を通じて新たな多様化・共生社会の創生へつながる研究でもあり、関連分野以外での発表を行うことも目標とする。
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