研究課題/領域番号 |
19J21544
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
大迫 優真 同志社大学, 脳科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | 視覚的気づき / 後部頭頂皮質 / 第一次視覚野 / ラット / 電気生理学 |
研究実績の概要 |
視覚刺激に対して「気づく」という内部状態を視覚的気づきといい、視覚的気づきを惹起する脳内メカニズムは未だ不明なままである。前年度の研究では、申請者が考案した行動課題を用いて、脳内神経活動と行動との相関関係を検討し、視覚的気づきに重要だと考えられる神経回路基盤を同定することを目的とした。動物の後部頭頂皮質と第一次視覚野の神経細胞は単一の活動レベルでは視覚的気づきを表象していないが、神経細胞の集団レベルで視覚的気づきに相関した活動を示すことを明らかにした。さらに、これらの神経細胞集団は視覚刺激応答性細胞だけでなく、視覚刺激に応答しない非応答性細胞の集団でも視覚的気づきに相関した活動を示すことを明らかにした。また、神経活動から視覚的気づきを予測する解析(デコーディング解析)から、視覚刺激応答性細胞集団は後部頭頂皮質の細胞集団が後部頭頂皮質・第一次視覚野の全体の神経細胞の活動からの予測と変わらないほどの精度であった。これは視覚刺激応答性細胞集団の持つ情報は、第一次視覚野ではなく後部頭頂皮質の細胞がより詳細な情報を有していることを示している。これに対して、視覚刺激非応答性細胞の情報は、第一次視覚野・後部頭頂皮質のどちらの集団も独自の情報を有していることが分かった。この結果から、後部頭頂皮質と第一次視覚野は視覚的気づきに重要な神経回路基盤であることを示し、視覚応答性細胞は後部頭頂皮質、視覚非応答性細胞は両領域の情報表現が重要なことがわかった。さらに、両領域に求心性、遠心性の神経投射方向をラベリングするウイルスベクターを投与し、それらの結合様式を検討した。その結果、後部頭頂皮質と第一次視覚野の相互的な結合様式を確認した。これらの結果から次年度は後部頭頂皮質から第一次視覚野のトップダウン経路に着目し、経路依存的な情報表現を精査する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
前年度の目的は、申請者が考案した行動課題を用いて、脳内神経活動と行動との相関関係を検討し、視覚的気づきに重要だと考えられる神経回路基盤を同定することと、次年度に向けて光遺伝学的手法のセットアップを進めることであった。現在までの研究進捗は、具体的な神経回路基盤を同定し、その領域における行動との相関関係のみならず、神経細胞集団の情報表現の理解に大きく前進している。さらに、光遺伝学のセットアップは完了しており、ウイルスの発現効率の検討、その技術習得も終えている。これらの進捗状況は当初の目的以上の結果であるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、後部頭頂皮質と第一次視覚野を結ぶトップダウン回路に着目し、この神経投射が貢献している視覚的気づきの情報表現を明らかにすることを目標とする。具体的には、この回路を光遺伝学的手法を駆使し、行動中の特定の時間に活動抑制することによって、行動への影響を検討する。
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備考 |
title : Dynamic coordination of the perirhinal cortical neurons supports coherent representations between task epochs
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