研究実績の概要 |
Advanced LIGOによって検出された中性子星合体イベントGW170817とそれに付随した多波長の電磁波観測から、連星中性子星合体から引き起こされる様々な放射についての理解が得られた。一方でジェット放出に伴う電磁波放射や合体後の残骸を理解することは、未解明な高密度状態方程式やジェットの放出機構などの解明のために重要であるが、現在多くの謎が残っている。本研究課題ではGW170817では詳しくプローブされることのなかった高エネルギーガンマ線観測に主に着目し、中性子星連星合体に付随する放射の理論計算を行い、観測戦略を提案・実践することを目標としている。
本年度は、主に中性子星合体からブラックホール形成された場合の形成直後の重力波放射についての研究を行った。GW170817周辺の重力波データの再解析から、合体後形成されたブラックホールから量子重力理論で予言される重力波エコーと整合する信号の存在が報告されている。我々はこのような回転ブラックホールからの重力波エコー信号を計算する枠組みを構築し、報告されているGW170817の信号が合体直後のブラックホールからのエコーとして説明可能であることを示した。またこのようなエコー信号は中性子星合体起源のブラックホールだけでなく、大質量星起源のブラックホールからも、次世代の重力波干渉計で地球から10Mpc程度の距離まで検出可能であることを示した。これらの成果をまとめた論文がPhysical Reviews D から出版された (Oshita, Tsuna, Afshordi 2020a,b)。
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