研究実績の概要 |
本研究は、植物プランクトンにおけるロドプシンの機能の網羅的解析と、ロドプシンの生理的役割の解明を目的としている。本年度の実施内容は以下の通りである。 1. 褐虫藻ロドプシンの探索と系統解析:ゲノムが解読されている褐虫藻からロドプシン遺伝子を探索し、複数のロドプシンに類似な配列を取得した。それらの配列の膜貫通性を予測し、ロドプシンの特徴である7回膜貫通の配列を選別した結果、11配列のロドプシンを検出した。これらの配列と機能既知ロドプシンの配列を用いて系統解析を行ったところ、褐虫藻のロドプシンは大きく3つのクレード(以下A, B, C)に分かれることが分かった。 2. 褐虫藻ロドプシンの機能解析:系統解析によって見出した3つのクレードのロドプシンを人工合成し、大腸菌に発現させて機能解析を行った。その結果、A, Bクレードにおいて、ロドプシンの活性を確認した。 3. 褐虫藻ロドプシンの利用波長の解析:A, Cクレードのロドプシンに関して、共同研究先である理化学研究所とともに利用波長の解析を行った。無細胞系でロドプシンを発現させ、吸収スペクトルを測定したところ、Aクレードのロドプシンは緑色光、Cクレードのロドプシンは青色光領域に吸収極大を持っていた。このことから、A, Cクレードのロドプシンでは、それぞれ異なる波長の光を用いることが分かった。 4. 褐虫藻培養系の立ち上げ:次度目以降、褐虫藻細胞内におけるロドプシンの局在を調べるために、褐虫藻細胞を培養する必要がある。共同研究先である東北大学より、褐虫藻の培養株を譲っていただき、受け入れ研究室にて培養を始めた。現時点で数回の植え継ぎを行ったが、その後の増殖を確認できている。
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