研究課題/領域番号 |
19J21582
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
長谷川 万純 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | 植物プランクトン / ロドプシン / 光合成 / 光エネルギー |
研究実績の概要 |
本研究は、植物プランクトンにおけるロドプシンの機能の網羅的解析と、ロドプシンの局在と利用波長を調べることによるロドプシンの生理的役割の解明を目的としている。令和2年度の実施内容は以下の通りである。 1. 褐虫藻ロドプシンの探索と系統解析:前年度の結果として、ゲノムが解読されている褐虫藻からロドプシン遺伝子を探索し、11配列のロドプシンを検出した。今年度は、新たに2種の褐虫藻ゲノムからも同様にロドプシン遺伝子を探索したところ、さらに11配列のロドプシンを検出した。これらの配列と機能既知ロドプシンの配列を用いて系統解析を行ったところ、褐虫藻のロドプシンは大きく4つのクレード(下記A, B, C, Dクレード)に分かれることが分かった。 2. 褐虫藻ロドプシン(Bクレード)の利用波長の解析:系統解析によって見出した配列のうち、Bクレードに属するロドプシンを人工合成して大腸菌に発現させ、各波長の光を当てたときのイオン輸送活性の大きさを比較することで、ロドプシンの利用波長の特定を試みた。 3. 褐虫藻ロドプシン(Bクレード)の詳細な機能解析:項目2で利用波長の解析を行ったロドプシンについて、機能・性状を詳細に解明するため、哺乳類細胞での発現を試みた。ロドプシンの発現とイオンの移動に伴う電気シグナルは確認できたが、発現量が少なかったため、現在、発現を改善するコンストラクトの作製を行っている。 4. 褐虫藻ロドプシン(Cクレード)の機能解析:系統解析によって見出した配列のうち、Cクレードに属する褐虫藻由来のロドプシン2配列を人工合成して大腸菌に発現させ、機能の解明を試みた。より解像度の高いデータを得るため、現在、発現を改善するコンストラクトの作製を行っている。また、今後、ウエスタンブロッティングを用いて、ロドプシンの発現の有無と発現量を確認する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、COVID-19の影響で一時実験を中断せざるを得なかったため、その期間を新規褐虫藻ロドプシンの探索にあてた。昨年度に探索した褐虫藻由来ロドプシンに加え、新たに2種の褐虫藻のゲノムからロドプシン遺伝子を探索した。ロドプシンの系統解析により、褐虫藻が持つロドプシンが褐虫藻系統内に広く存在する可能性を見出した。また、それらの異種発現にも成功し、数配列ではあるが褐虫藻の持つ未知ロドプシンの機能と利用波長を明らかにした。本年度、機能解析ができなかったサンプルに関しては、現在コンストラクトの改善を行なっており、引き続き機能の解明を目指す。受入研究室では主に細菌の生態学的研究を行っているため、真核微生物由来ロドプシンの分子生物学的・分光学的解析を行うには新しい手法や装置を用いる必要がある。そのため、参考文献やプロトコル、共同研究先とのディスカッションを通して、新しい実験システムを構築し、実験を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、主に以下の課題に取り組む予定である。 1. 褐虫藻由来ロドプシンの機能解析:本年度、機能解析ができなかったロドプシンについて、現在改善しているコンストラクトを用いて発現条件を改善し、機能解析を試みる。 2. 褐虫藻由来ロドプシンの詳細な特性解析:機能解析ができたロドプシンについて、共同研究による分光解析・電気生理学的な解析により、利用波長やpH依存性など、さらに詳細な特性を明らかにする。 3. 褐虫藻由来ロドプシンの発現・局在解析:ロドプシンに特異的なペプチド抗体を作製し、褐虫藻由来ロドプシンの発現確認と局在解析を試みる。
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