研究実績の概要 |
本年度はカイラル物質の電磁場への応答であるカイラル磁気効果や異常ホール効果を統一的に記述するトポロジカルな場の理論であるアクシオン項をトーションの存在する系への一般化を目指した。その際にカイラル運動論を用いたが外場に対して一次までの輸送しか記述できず、考えていた輸送現象は二次応答なので直接適用することが不可能であった。二次応答を記述するためには、外場に対してウィグナー関数を通常一次まで計算しているところを二次まで求める必要があった。 回転する3フレーバーのバリオン物質の基底状態に関して、昨年度の論文JHEP07(2020)196でη’中間子のカイラルソリトン格子(CSL)状態になることを示したが、実はπ中間子を考慮することで新奇な基底状態になることを発見した。今回の解析では簡単のために2フレーバーを考え、軸性変換方向の中間子であるη中間子とπ中間子の両方を考慮した低エネルギー有効理論を用いた。その結果、η中間子とπ中間子の崩壊定数の差により、先行研究で考えたηCSL格子状態はπ中間子の揺らぎに対して不安定であることを示した。実現される基底状態は、回転軸の方向にアイソスピンの自由度をもつソリトンが反強磁性的に並んだ状態である。この状態はπ中間子部分が重要であることから非可換CSL格子状態と呼ぶことにした。更に非可換CSL状態はソリトンがダイマーを形成したダイマー相と完全に分離している非閉じ込め相に分類でき、ダイマー相は非閉じ込め相、従来知られていたηCSLとQCD真空三つの相と接しており、三重臨界点が存在することを発見した。励起状態もηCSLとは異なり、並進対称性の自発的破れに伴うフォノンと、アイソスピン対称性の自発的な破れに伴う別のギャップレスモードが生じる。更にη,π中間子に関するトポロジカル項によって非可換CSL状態はフェリ磁性、ηCSLはフェロ磁性になることを示した。
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