研究課題/領域番号 |
19J21665
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
赤星 太一 慶應義塾大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | 細胞単離 / カルシウム振動 / 運動ニューロン / 自発運動 / カタユウレイボヤ |
研究実績の概要 |
今年度は、4月上旬から6月下旬ごろまでコロナウイルス感染症対策として、大学への立ち入りが認められなかった。当該期間は在宅での論文執筆や、すでにある実験データを基にした図表の作成等をおこなった。6月下旬以降では、主に下記ついて実験による検証をおこなった。 1.Ca2+振動を示す運動ニューロンA10.64は1細胞へ単離してもCa2+振動を示すか ホヤ胚をトリプシン処理により単一細胞に分離した後、標識したA10.64がCa2+振動を示すか検証した。結果1例ではあるが、標識したA10.64でもCa2+振動が見られた。今後は実験条件の改善も検討しつつ、追加して実験をおこなう。 2. A10.64と他の運動ニューロンとの活動の関係について 本実験では後期(St.24-St.25)で左右に5対あるといわれている運動ニューロンのうち2つ(解剖学的な位置関係からA11.117とA11.118と推測される)が活動を始める様子が撮影できた。この2種の細胞が活動を始める初期では、2種の細胞の活動とA10.64の活動は、同期しなかった。また尾部運動もA10.64の活動時のみに生じていた。ゼブラフィッシュでは運動ニューロンは徐々に同期する細胞を増やしていくことが先行研究により報告されている。今後はさらに後期でそのような様子が見られるのか検証する。 論文作成は当初の計画より、時間がかかったが、3月上旬に論文を投稿しbioRxivに掲載した。学会発表では投稿中の論文の内容について、第91回日本動物学会、第5回ホヤ研究会でいずれも口頭による発表をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1. 細胞単離した1細胞の状態でもCa2+振動を示すものがあると判明したこと。 2. A10.64以外の2種の細胞の活動をとらえ、A10.64との活動の関係について示唆が得られたこと。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、これまでの結果を論文としてまとめ掲載することを優先する。その上で、現段階で今後は次の4点に注力したい。 1.Ca2+振動を示す運動ニューロンは1細胞へ単離してもCa2+振動を起こすか。2.ACINの神経活動とA10.64、遊泳運動との関係。3.Ca2+振動に関わる原因遺伝子の特定(阻害剤、モルフォリノオリゴ、WISH法などを用いる)。 1.今年度までにCa2+センサと共に、A10.64を特異的に標識するコンストラクト(Neurogenin-Kaede-NLS)を導入し、1サンプルではあるが、標識された単一細胞でもCa2+振動が見られた。今後は引き続き、実験を追加し再現性を確かめる。2.ACINのライブイメージングは交互の遊泳運動を説明するうえで重要である。現在までにACIN上でCa2+上昇を明瞭にとらえることはできていない。解決方法として、高倍率な対物レンズへの変更、2光子顕微鏡での撮影への変更、撮影間隔を変更などを検討する。それでも難しい場合は、神経全体にセンサを発現させるシナプトタグミンプロモータへの変更を検討し同時イメージングを試みる。3.Ca2+振動に関わる分子として一般には電位依存性Caチャネル、持続性Naチャネル、Ca依存性Kチャネル等が挙げられる。このうち、T-type型CaチャネルがA10.64が局在する運動神経節に特異的に発現していることが先行研究により明らかにされている。そこでT-type型CaチャネルがCa2+振動に関係するか検証する。具体的には薬剤による阻害、モルフォリノオリゴによるノックダウン、WISH法による発現確認をおこなう。またCa2+振動への関与が見られない場合にはホヤにおいて発現している他の電位依存性Caチャネル(L-typeVGCC,P/Q/N-typeVGCC)についても検証する。
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