研究実績の概要 |
筋骨格ヒューマノイドは多数の生物規範型の利点を有する一方, その柔軟で複雑な身体の制御は困難であった. しかし, その柔軟性を克服し身体の剛性を自在に操る・道具により身体を拡張することができれば, これまでにない形で環境適応行動が実現されると考える. この目的のため, 本年度は主に, (1)前年度開発したハードウェアへの追加冗長センサ実装, (2)静的・動的な自己身体像獲得手法確立と身体変化への適応, (3)可変剛性・道具拡張身体像への応用と環境適応行動実現, について扱った. (1) 前年度開発した筋骨格ヒューマノイドへの聴覚センサ・臀部触覚センサ実装を行い, より冗長なセンサとして自己身体像獲得への利用を検討している. また, 筋骨格ヒューマノイドMusashiに加えて, 筋骨格脚MusashiOLegs, 筋骨格双腕MusashiDarmを開発し, 最終年度の実機実験に向けた準備を行った. (2) 前年度開発した静的・動的な自己身体像獲得手法を洗練し, 自動的にネットワーク入出力が決まる機構, 学習した自己身体像を用いた制御・状態推定・異常検知・シミュレーションについてその手法を確立した. また, Parametric Biasを用いた身体の経年劣化・センサキャリブレーションのズレ・把持物体変化等の対応, センサの確率的挙動への対応等を可能にする手法を開発した. (3) (2)で開発した手法を応用し, タスクごとに適切に剛性を設定可能な手法の実現を目指して実験を行っている. また, 自己身体像を道具にまで拡張することで, 静的な身体-道具関係の学習に成功し, 清掃動作を行っている. 最後に, 環境適応の観点からこれまで行ってきた身体像獲得, 身体-対象物間関係獲得, 身体-道具間関係獲得について分類し, 最終年度の一連の環境適応行動に向けて, 今後の方針を固めた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の計画はハードウェアの改良・自己身体像獲得手法の確立・可変剛性と道具拡張身体像の獲得による環境適応行動実現の3つであった. ハードウェアについては, より冗長なセンサとして聴覚センサ・臀部触覚センサを実装したことで, 今後の動作の幅が広がった. また, 前年度開発した筋骨格ヒューマノイドMusashiに加えて更に2つのロボットを開発することで, 最終年度の環境適応行動実現に向けての準備が整った. 自己身体像獲得については, 静的・動的なセンサ間関係について制御・状態推定・異常検知・シミュレーションを統一的に行う手法を提案することで, より多様なセンサ利用による環境適応, 多様な身体構造・タスクへの応用が可能となり, 最終実験に向けた準備が整ってきている. また, Parametric Biasを使った身体変化への適応も可能となったため, より環境適応能力が高まったと言える. 可変剛性・道具拡張身体像については, 前述の自己身体像獲得を自然な形で拡張することで可能となり, 身体-道具-対象物の静的な関係性を扱うことが可能となってきた. 一方, 動的な道具拡張身体像や可変剛性制御を含めた自己身体像獲得はまだ出来ておらず, 最終年度の課題となった. それぞれの項目について, 国際学会または国際学会誌において論文発表をしてきており, 最終年度に向けた準備が整った. これらの理由から, 本研究課題はおおむね順調に進展していると言える.
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