研究課題/領域番号 |
19J21733
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
宮川 浩平 東京工業大学, 理学院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | 太陽系外惑星 / トランジット / ケプラー宇宙望遠鏡 / 周連星惑星系 / 多波長測光観測 |
研究実績の概要 |
本研究の最終目的は連星周りの惑星系の形成理論の解明、および一般的な惑星の軌道進化過程の解明である。そのため昨年度は、連星系周りの惑星系の効率的な検出手法の確立に関する以下の2つの研究を遂行した。 (1)まず、多波長測光観測データの画一的な解析アルゴリズムの開発である。これは惑星候補天体が複数恒星を含む系である可能性を考慮した上で、各恒星の質量や半径を含めたターゲットの正体の推定を可能にするものである。本アルゴリズムをケプラー宇宙望遠鏡の第二次ミッションであるK2ミッションで観測された6天体に対して適用することで、その有用性を実証した。従来の手法では、連星周りの惑星系はa)恒星間の距離が十分離れているか、b)各天体の軌道面が揃っているものに制限されていたが、本アルゴリズムによりa), b)いずれにも依存しない資料の採集が理論上可能となった。 (2)次に、近赤外波長帯における若い低温度星の表面活動の調査を行なった。若い恒星周りの惑星系は、軌道進化を時系列的に理解するためにも重要なターゲットである。一方で、中心星の表面活動由来のシグナル(以下、ジッター)が観測されてしまうため、一般的な惑星検出手法である可視波長帯における視線速度法では正確な惑星の質量推定が難しい。このため近年では、理論上ジッターの影響を受けにくいとされる近赤外波長帯での観測装置が世界的に注目され開発が進められている。しかし現在までそれらの振る舞いの観測的な実証は行われていない。そこで本調査では南アフリカ天文台に設置されている近赤外多波長測光機器(IRSF/SIRIUS)を利用した、ヒアデス星団に属する4つの低温度星のジッターの測光観測を実施した。2020年5月現在解析中であり、得られる結果は本研究での追観測を行う上で重要な資料となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は(1)連星周りの惑星系の検出アルゴリズムの開発、(2)若い低温度星のジッターの近赤外波長帯での測光観測を行なった。(1)は当初の研究計画の要となる研究であり、予定通りの進展が得られたと評価できる。(2)での観測データは宇宙望遠鏡で検出された惑星候補の追観測を行う上で一般的な指標となりうる。また、惑星科学のみでなく恒星物理等の分野にとっても貴重な資料である。 新型コロナウィルスに起因する研究会の中止、渡航制限、研究室への登校禁止などにより、年度末は効率的な研究の進捗が得られなかったものの、概ね順調であると評価する。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度5月現在の新型コロナウィルスによる各国渡航制限、施設封鎖を考慮した上で、海外での観測計画を主軸とした当初の研究計画を遂行することは現実的ではない。よって可能な限り予定通り研究を行う前提で、予備の研究としてケプラー宇宙望遠鏡のアーカイブデータを利用した連星由来のシグナル検出の実施を計画する。 ケプラー宇宙望遠鏡の二次ミッションであるK2ミッションで採集されたおよそ36万天体の光度曲線に対し、周期解析、機械学習等の技術を適用することで連星周りの惑星系における連星由来のシグナルの検出を目指す。また外部機関に対して低分散分光観測の依頼を行い、興味深いターゲットのフォローアップを行う。観測されたデータに対して、複数恒星のモデルスペクトルをフィットすることで、光度曲線解析結果の評価、連星の検出を行う。さらに実際に検出できた連星周りの惑星系やその他の系の年齢に対する数や周期を比較することで、惑星系の軌道進化におけるシナリオ(重力散乱、コザイ効果)への検証が期待できる。解析対象としているデータの数は統計的に有意な知見を得るには十分であると考える。
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