研究課題
近年、SOIの小さな銅表面を自然酸化させた銅での高効率スピン流生成の報告がなされ、膜厚方向への組成傾斜に由来する電子のドリフト速度由来の渦度→スピン流変換機構の存在が示唆されている。本研究はこの渦度由来スピン流生成の定量的検証及び系統的調査に挑戦し、貴金属に依存しないスピン流デバイス実現への指針の提示を目指すものである。本年度は、A:スピントルク検出層の膜厚依存性測定によるスピントルクの精密測定、B: 逆スピンホール効果測定によるSOIの寄与の有無の解明 C:数値計算を用いた傾斜構造におけるスピン流シミュレーションを遂行した。A.スピン流が磁性体中の磁化に与えるトルクには直交する2成分が存在する。スピントルク検出層(磁性層:NiCu)の膜厚依存性測定を用いて2成分のトルクを分離する実験を遂行した。Si/Al傾斜材料系がPtと同程度~数倍のトルク効率を示す結果を得た。B.Si/Al2層膜の界面にAl-Siの薄い交互層を挿入したSi-Al傾斜膜においてスピン流→電流変換効率が電流→スピン流の変換効率に比べて小さくなる巨大非相反性を示すことを逆スピンホール効果測定によって明らかにした。この巨大非相反性は電流渦によるスピン流生成が示唆される自然酸化銅においても報告されており、Si-Al傾斜膜における渦度→スピン流生成を示唆する重要な結果である。C.従来のスピン拡散方程式では考慮していなかった物質パラメータの空間依存性を取りこんだ求解プログラムを実装した。固溶系において組成比が1:1となる付近で電気抵抗率が極大を取るNortheim則に従うことを考慮した。その結果、非固溶系に比べ固溶系の2元系傾斜材料が大きなスピン流生成効率を示すことが示唆される結果を得た。この結果は傾斜材料を用いた巨視的回転のスピン変換における材料選択指針を示す重要な結果である。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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