研究課題/領域番号 |
19J21797
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
松本 慧大 九州大学, 理学府, 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
|
キーワード | マグノン / フォノン-ポラリトン / ポンププローブ法 / カイラル磁性 |
研究実績の概要 |
本研究はカイラル磁性を持つ物質に特有な物性を光測定によって明らかにするものである。反射配置のポンププローブ測定系を完成させ、カイラル磁性体CrNb3S6の時間分解測定を行い、磁気的素励起や光誘起相転移などの調査を行うことができた。
昨年度、マルチフェロイック物質BiFeO3におけるマグノンモードを実時間測定し、モード同定や選択測を明らかにした。今年はまずフォノン-ポラリトンの伝播特性や物理を明らかにするために、BiFeO3と結晶構造が同じで磁性を持たないLiNbO3を対象に実験を行った。通常のフォノン-ポラリトンの研究ではプローブ光として直線偏光を用いるのに対し、我々は円偏光を用いて楕円率変化を測定した。楕円率変化を観測することで、フォノン-ポラリトンの電場成分を選択的に検出できるようになり、伝播特性や電場の空間的波形を観測できるようになった。この実験結果は、Mawell方程式を用いた数値計算とよく一致していた。
本年度より、5 Kまで冷却することができる冷凍機が導入され、低温下でのポンプ・プローブイメージング測定が可能となった。これによりマグノンとフォノン-ポラリトンが結合したマグノンフォノンポラリトンモードの励起・検出が期待できる。この測定系を用いて、BiFeO3におけるマグノンモードの温度依存性が、先行研究と一致したことを確認した。しかしながら、手持ちの試料ではマグノンとフォノン-ポラリトンの結合を示すために十分な分散関係の分解能がなかった。そのため、我々はスパースモデリングを用いた分散関係の分解能向上を試みた。マグノンの伝播特性が既知のフェリ磁性試料において、ポンププローブイメージング測定を行い、得られた結果をスパースモデリングを用いて解析した。解析の結果、分散関係を短時間かつ高精度に得ることができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究はキラル磁性を持つ物質に特有な物性を光測定によって明らかにするものである。 カイラルソリトン構造を持つCrNb3S6において低温測定を行い、磁気的素励起や光誘起相転移などの調査を予定通り行うことができた。 また、1年前から引き続き実験を行っているBiFeO3の実験では、低温下測定を可能にしたり、スパースモデリングを用いた解析方法を考案したりすることができた。 さらに、BiFeO3マグノンとフォノン-ポラリトンの伝播・電場特性を詳細に理解できるようになったことで、来年度の研究をさらに推し進めることが期待できる。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は、スパースモデリングを用いたBiFeO3におけるポンププローブイメージング結果の解析を行い、より高い分散関係の解像度を実現する。マグノン-フォノン-ポラリトンの結合を実験的・理論的に検証する。 また、極低温下で測定が実現するので、フェリ磁性体における磁化補償温度や角運動量補償温度付近で実験を行い、光誘起相転移や非線形マグノンなどについて詳しく調べる予定である。
|