昨年度は、スパースモデリングによる解析手法を用いてポンププローブイメージング法で測定した分散関係を明瞭化した。これにより、マグノンを含むの分散関係を短時間かつ高精度に推定することを可能にした。 また、強誘電かつ反強磁性であるBiFeO3と同じ結晶構造をもつ強誘電体LiNbO3において、フォノン-ポラリトンの時空間波形を実験的に観測し、マクスウェル方程式を用いた数値計算によって再現した。これにより励起・検出メカニズムと物理的性質を明らかにし、縦波と横波のフォノン-ポラリトンを選択的に検出する手法を確立することができた。
本年度は次段階として、BiFeO3においても同様のポンププローブイメージング測定を行った。LiNbO3の場合と同様に縦波と横波のフォノン-ポラリトンが明瞭に観測された。BiFeO3のカイラル磁気構造に由来するエレクトロマグノンの分散関係と、フォノン-ポラリトンの分散関係が交わるはずの点において、遅い群速度の素励起が存在していた。この結果はエレクトロマグノンとフォノン-ポラリトンの結合と分散関係の反交差を示唆している。 その分散関係上の点において温度依存性を測定したところ、先行研究で報告されていたエレクトロマグノンの温度依存性と一致していることがわかった。これによりエレクトロマグノンとフォノンポラリトンが結合した、マグノン-フォノン-ポラリトンの存在が裏付けられた。さらに励起光の偏光依存性を測定すると、フォノン-ポラリトンの偏光依存性と一致していたため、マグノン-フォノン-ポラリトンはフォノン-ポラリトンのテラヘルツ電磁場により励起されていることが明らかになった。
|