研究実績の概要 |
まず、修士課程の研究内容「アリールジメチルプロペニルシランのメタセシス反応」の研究データのまとめを行った。以下、その研究成果について説明する。 ビニルシランのメタセシス反応は進行しづらいことが報告されていた。今回、ビニルシランの末端にメチル基を導入したプロペニルシランを用いることでメタセシス反応が進行することを見出した。このメタセシス反応はビニルシランを用いたメタセシス反応と同じ生成物を与えることから、今まで困難だったビニルシランのメタセシス反応の開発を成功させたと言える。本反応はクロスメタセシス、閉環メタセシス、エニンメタセシスにも適用可能で基質適応範囲が広いと言える。一方で、ビニルシランを用いた際に反応が進行しない理由としてルテニウムカルベン錯体がカーバイト錯体に変化しているため、ということを明らかにした。この事実をまとめ、Chem. Commun. 2019,55, 14070-14073 に掲載している。 その後、新反応を発見すべく、シクロプロパンとアリルシランを分子内に持つ基質やアセチレンとアリルシランを分子内に持つ基質、アセチレンとビニルシランを分子内に持つ基質、アルキンとアリルシランを分子内に持つ基質などを合成し、ルテニウムやパラジウム、金、白金などの種々金属触媒との金属触媒反応を試した。結果として、アセチレンとアリルシランを分子内に持つ基質と金の触媒という組み合わせにおいて、新しいベンゾシロールを合成することができた。また、銀触媒を用いたアリルシラン同士のカップリング反応によりジシロキサンを合成することにも成功した。今後はこれらの詳細な反応機構と基質適用範囲などを探っていく予定である。
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