研究課題/領域番号 |
19J21858
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
岡崎 めぐみ 東京工業大学, 理学院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | 酸化コバルト / 酸化チタン / 遷移金属酸化物 / ルテニウム錯体 / 光生成電子ポテンシャル / 水の可視光分解反応 |
研究実績の概要 |
本研究では、今年度、酸化チタン表面上に担持された水の酸化用ナノ粒子助触媒の電子の化学ポテンシャルの見積もり手法の確立に注力した。申請者は昨年度、表面担持された金属酸化物種の「水に対する酸化力」をより定量的に理解するため、ルテニウム錯体を使った水の光化学的な酸化反応による手法を設計した。過去の報告では、ルテニウム錯体の特性のほとんどが有機溶媒中で測定・調査されていた。今回提案した手法はすべて水中における調査となるため、その確立のため本手法で用いるルテニウム錯体の光化学的・電気化学的な特性調査を水中にて行った。その調査から、4種類のルテニウム錯体が本手法にて使用可能であることを明らかとした。その上で、調査対象である金属酸化物ナノ粒子を触媒として用いたルテニウム錯体による光化学的な水の酸化反応を複数条件下(複数のルテニウム錯体による調査・反応水溶液のpH調整)で行った。その結果、今回調査を行った各金属酸化物ナノ粒子に対し、100mV以内の範囲でそれらが有する電子の化学ポテンシャルを定量的に評価することに成功した。 次に、昨年度から引き続き、金ナノ粒子担持酸化チタン光電極に対する酸化コバルト助触媒の位置選択的光析出およびその高性能化にも取り組んだ。今年度は、昨年度に得られた成果をアメリカ化学会の国際学術誌に掲載したとともに、オンラインで行われた複数の国内学会にて発表を行い、外部の先生方および専門家の方々と議論を深めることができた。また本件のさらなる応用に向け、現在も北海道大学三澤研究室と共同で研究を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
酸化チタン光触媒表面上に担持された金属酸化物ナノ粒子の電子の化学ポテンシャルを見積もる手法確立に向けた研究に関して、当初計画にあった金属酸化物ナノ粒子の電子ポテンシャルの見積もり手法の精度・確度向上に成功し、オンラインで開催された国内学会での発表も行った(2020年度に予定されていた国際学会での発表はコロナ禍により翌年度以降に延期)。 また、昨年度に確立した、金ナノ粒子担持酸化チタン光電極に対して酸化コバルトを位置選択的に析出させる手法に関して、原著論文としてまとめ上げ、アメリカ化学会のACS Applied Energy Materials誌に発表した。本成果についても、オンラインで行われた国内学会で複数回発表し、議論を深めた。現在も引き続き、光電極のさらなる高性能化に向け、金ナノ粒子担持酸化チタン以外の光電極に対しても酸化コバルトを析出させる研究を継続して行っている。 本年度は新型コロナウイルスの影響により数ヶ月間の一斉休校や出校制限期間があり、実験が予定通り進まない時期もあったため、研究活動が大幅に制限された。そのため研究の進展にも懸念がもたれたが、オンラインで開催された学会やゼミナール・講習会に積極的に参加すると共に、周到に文献調査を行うことで限られた時間を有効に研究活動に充てることができた観点から、期待以上に研究が進展したと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
酸化チタン表面担持金属酸化物種の光生成電子ポテンシャルの見積もり手法に関して、さらなる応用を目指す。これまで複数種類の金属酸化物ナノ粒子に対し見積もりを行えることが確認されてきた。この成果を活かし、本手法の汎用性を高めることを目標とする。具体的には、酸化コバルトナノ粒子を酸化チタン以外の半導体粉末上に担持した場合に生じ得る電子ポテンシャル差や、ナノ粒子のサイズと電子ポテンシャルの相関の調査を行う予定である。これら調査が完遂できれば、半導体光触媒を用いた水の完全分解反応において、より戦略的な助触媒選択が可能になると考えている。 また酸化コバルトナノ粒子担持ワイドギャップ半導体を用いた水の完全分解反応を達成するため、担体であるワイドギャップ半導体の効果について詳細な検討を行う。具体的には、酸化チタンよりも水に対する還元力が強いと期待されるチタン酸ストロンチウムを用い、さらにはナノ粒子化した結晶を使用することによって、水の完全分解反応を試みる。 酸化コバルト助触媒を選択析出させた金ナノ粒子担持酸化チタン光電極に関しても引き続き調査を行う。金ナノ粒子担持酸化チタン光電極よりも性能が高い光電極材料を用い、それに対する酸化コバルトナノ粒子の位置選択的担持および、それによる効果の検証を行う予定である。 いずれのテーマに関しても、得られた成果は学会や論文投稿を行うことで外部に対して積極的な発表を行い、議論を深めながら研究を進めていく予定である。
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