研究課題/領域番号 |
19J21874
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
吉村 直人 九州大学, 人間環境学府, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | 空間 / 感情 / 年齢推定 |
研究実績の概要 |
本年度は、個人の空間的経験の違いが情動と空間の連合をどのように変容させるのかとともに、情動の認知的バイアスについての検討も行った。 (1)空間的経験の違いが情動―空間の連合にどのように影響を及ぼすかを検討 我々は自分を取り巻く空間から情動を連想する。これまでの研究では,上をポジティブ,下をネガティブな感情価と関連付けることが報告されている。本研究では,この空間-感情価の関連性が,参加者の空間経験の違いによって変化するかどうかを調べた。実験では規程の四角い枠内に各情動(喜び、驚き,悲しみ)が意味づけられた3つの図形をそれぞれ任意の位置に置いてもらうword allocation task を実施し,ダイバーと非ダイバーで比較した。その結果,個人の空間的経験に限らず「上=良い」「下=悪い」という強固な関連性が見られた。さらに,これらの研究成果が査読付き国際誌への投稿を目指し準備している。 (2)表情の違いが他者の年齢推定に及ぼす影響についての文化比較 笑顔は人を若く見せると信じられているが実際には笑顔が老いて見える研究結果が報告された。しかし,この誤認識が文化を超えて一般化できるか明らかではなかった。そのため異文化間での妥当性を,日本とスウェーデンの参加者からデータを収集して検証した。具体的には,日本人とスウェーデン人の顔刺激を分け,日本人とスウェーデン人の顔の年齢を推定するグループに日本人とスウェーデン人の参加者グループを加えた。その結果,顔刺激の文化や国籍にかかわらず笑顔は人を若く見せると考えているが直接的な評価では笑顔の方が年上と評価されることが一貫して示された。この結果から,笑顔が人を若く見せるという信念が,文化を超えて一般的な誤解であることを明らかにした。この研究成果は論文としてまとめられ,査読付き国際誌に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルスの影響により、予定していたフィールド調査や水中でも実験が実施困難な状況となり、代替策として、オンライン上でも実施可能な実験をいくつか行った。さらにそれらの実験のうちの一つは国際査読雑誌に掲載されるなどの成果は得られたものの、依然として感染症の猛威は落ち着きを見せないことから対面による実験は未だ実施できない状況のため、やや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
依然として、新型コロナウィルスの影響は予測できないことから、今後もしばらくの間はオンラインによって実施可能な実験等を模索し、行っていくこととする。また、緊急事態宣言の解除などの折りを見て、所属機関の指針に従いながら対面実験を行なっていく。
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