研究課題/領域番号 |
19J21998
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
佐藤 萌子 横浜市立大学, 生命ナノシステム科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | サイトカイニン / オーキシン / イネ / メリステム / イメージング / フロリゲン / 花成 |
研究実績の概要 |
イネの茎頂メリステムはフロリゲンHd3aの作用で花序メリステムへと転換すると、穂の分枝となる一次枝梗メリステムや二次枝梗メリステムを形成する。このような側生メリステムの形成はオーキシンやサイトカイニンなどの植物ホルモンが重要である。例えば、サイトカイニン分解酵素の減少によるサイトカイニン量が増加は、穂の分枝数と種子数を増加させることや、オーキシン生合成に必要な酵素が欠損すると穂が小さくなることがイネで知られている。しかし、これらの植物ホルモンがどのように穂の分枝を増やすかは明らかになっていないため、栄養成長期から生殖成長期にかけての茎頂メリステムにおける時空間的な分布を知る必要がある。 この目的のために、本研究ではサイトカイニン情報伝達とオーキシン情報伝達を可視化するレポーター系統をそれぞれ確立した。さらにサイトカイニン情報伝達とオーキシン情報伝達の分布を空間的に明らかにするため、本年度は観察方法の検討を行った。その結果、茎頂メリステムの細胞壁染色と透明化処理を行うことで、茎頂メリステムの全層撮影が可能となり得られた画像から3D構築することに成功した。これにより、栄養成長期から生殖成長期にかけてのサイトカイニン情報伝達とオーキシン情報伝達の空間的な分布を明らかにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、イネの穂の分枝数を制御するサイトカイニンとオーキシンの時空間的な情報伝達の分布を茎頂メリステムにて明らかにすることである。本研究では、サイトカイニン情報伝達を可視化するレポーターTCSv2とオーキシン情報伝達を可視化するレポーターDR5をそれぞれ導入した形質転換体イネを作出して茎頂メリステムでの蛍光観察を試みた。レポーター系統はこれまで大量にスクリーニングを行い、観察可能な系統を見つけ出した。 本年度は、イネのレポーター系統の蛍光観察は蛍光シグナルが弱いことや、自家蛍光が強いことから、まず茎頂メリステムの観察方法の検討を行った。様々な観察方法を試した結果、茎頂メリステムを細胞壁染色し、透明化処理を行うことで茎頂メリステムの全層を撮影することが可能となった。この観察方法でレポーター系統を撮影し、得られた画像を3D構築することで、サイトカイニン情報伝達とオーキシン情報伝達の空間的な分布を明らかにした。 今後は、これらのレポーター系統を交配し、サイトカイニン情報伝達とオーキシン情報伝達の分布を同時に観察でき二重形質転換体系統を作出して、茎頂メリステムにて観察を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は交配にて作出したサイトカイニン情報伝達とオーキシン情報伝達を同時に観察可能な二重形質転換体について蛍光観察を行い、茎頂メリステムの形態変化時における両者の分布を明らかにする予定である。さらにサイトカイニンとオーキシンに加えて、花成誘導因子であるフロリゲンもまた穂の分枝数を制御することから、フロリゲンの局在と植物ホルモン情報伝達がどのように関連するかを検討する。
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