現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,超解像マルチカラーイメージングを実現するために,オルガネラ特異的な超耐光性蛍光プローブや,マルチカラー蛍光プローブの開発,細胞を使った性能評価に取り組んできた.これまでに,脂質代謝において重要な役割を果たす脂肪滴に着目し,超耐光性脂肪滴蛍光プローブを開発してきた.また,多様なオルガネラが関与する脂肪酸代謝を可視化するための環境応答性蛍光脂肪酸を開発してきた. 超耐光性脂肪滴蛍光プローブの開発に関しては,これまでに平面固定化した[1]ベンゾチエノ[3,2-b][1]ベンゾチオフェン-S,Sジオキシドを基本骨格とした分子を合成し,この分子が優れた耐光性と高い脂肪滴特異性,膜透過性といった超耐光性脂肪滴染色剤として優れた性質を示すことを明らかにした.さらに,この分子 がSTEDイメージングでの極微小な脂肪滴の可視化に適用可能である点や,市販のオルガネラ染色剤とのマルチカラーイメージングにも適用可能である点,微小な脂肪滴の動態の長時間にわたるモニタリングを可能にする点を実証し,従来の脂肪滴染色剤に対する優位性を示すことに成功した.これらの成果に関してまとめた論文を投稿し,受理された (ACS Materials Lett., 2021, 3, 42-49.). 環境応答性蛍光脂肪酸の開発に関しては,これまでに3a-アザピレン-4-オンを用いた脂肪酸誘導体を開発し,この分子が細胞内で天然の脂肪酸と同様の代謝経路で代謝され,かつ代謝産物の細胞内分布を色の違いとして可視化できることを示してきた.さらに,この脂肪酸誘導体を用いて,従来の分子ツールでは可視化することが困難なオートファジーにおける脂肪酸の動きの可視化に成功した.こちらの研究成果に関しても,論文を投稿できる段階まで到達しており,順調に研究課題を遂行できていると判断できる.
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