研究課題/領域番号 |
19J22030
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
郡 聡実 横浜市立大学, 生命医科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | DNAメチル化 / DNA複製 / 構造生物学 / ユビキチン化 |
研究実績の概要 |
哺乳類のDNAメチル化はゲノム中のCG配列のシトシン塩基に起こり、発生やX染色体の不活性化、ゲノムインプリンティングなど様々な生命現象に関与する主要なエピジェネティック修飾である。DNAメチル化は細胞固有の遺伝子発現パターンを規定する。したがって、細胞がその形質を維持するためには、DNAメチル化の情報が細胞分裂を経て次世代の細胞へと正確に継承される必要がある。このDNA維持メチル化には、E3ユビキチンリガーゼUHRF1と維持型DNAメチル化酵素DNMT1が必須の因子として働く。DNA維持メチル化は、UHRF1によってユビキチンされたヒストンH3がDNMT1をメチル化サイトに呼び込む機構が知られていた。我々は新たに複製因子PAF15がUHRF1によってユビキチン化され、DNMT1を複製鎖に呼び込むことを明らかにした (Nishiyama et al., 2020)。このことから、複製と連携したDNA維持メチル化の新しい分子機構の一端が解明された。 本研究では、PAF15が担う複製と連携したDNA維持メチル化の構造生物学的な解明を目的としている。本年度は、PAF15を含む複製サイトで形成されるタンパク質複合体、またはタンパク質-DNA複合体の再構成を行った。調製した複合体の生化学実験から、PAF15の新たな機能を示唆する結果を得た。また、複合体の立体構造の決定に向けてクライオ電子顕微鏡による測定を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PAF15がDNA維持メチル化を担う新たな因子であることを明らかにし、この成果はNature communications誌に採択された。さらに、PAF15が関与するDNA維持メチル化の構造生物学的な観点からの解明を目指し研究を行った。生化学実験からは、これまで報告されていないユビキチン化PAF15の新たな機能を示唆する結果を得た。また、PAF15を含む複製サイトで形成されるタンパク質複合体、またはタンパク質-DNA複合体の再構成に成功し、クライオ電子顕微鏡による測定を行った。構造決定には至っていないものの、測定条件の変更で解析が期待できる状態である。
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今後の研究の推進方策 |
測定条件の検討を行い、クライオ電子顕微鏡による立体構造の決定を目指す。また、複合体のX線溶液散乱測定を行い、低分解能な構造情報を得る。異なる手法で得られた構造情報を組み合せて、複合体のサブユニットの位置を相関的に評価する。
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