研究課題/領域番号 |
19J22036
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
秋光 萌 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | 磁気リコネクション / プラズマ合体 / 電流シート / プラズモイド / リコネクション加熱 / 高精細二次元計測 / 磁気プローブ / 二次元トムソン散乱計測 |
研究実績の概要 |
本年度は計画のうち,TS-6でのプローブによる直接計測による加熱検証実験と,電子温度・密度測定のための二次元トムソン散乱計測システム,速度異方性計測系の開発,電子ST40での高磁場実験参加などを行った. TS-6合体実験において,高ガイド磁場下で電流シート内部に閉じた磁気面が検出され,電流シートがBlob状に分かれる現象を発見した.Arプラズマにおいて合体プラズマの電流シート中にできる磁気島のサイズはおおよそ1~4cmであり, リコネクション初期に形成されている.その際電流シートはガイド磁場によりホール効果で傾きガイド磁場の反転によって傾きも反転している.さらに合体中に電流シートは一様に分布しているわけではなくBlob状に分かれ,その形成・放出の状況はオペレーションによって変化している様子が観測された.また,高精細な磁場計測と同時にz方向10mm,r方向14mmの分解能をもつ二次元可視光トモグラフィー計測を行い,はじめてイオンのラーマー半径スケールでの磁場と可視光の二次元同時計測を行った.二次元可視光分光計測においては発光強度分布が閉じた磁気島の位置でピークしていることが観測され磁化した電子が磁気島内に閉じ込められていることがわかった. 往復反射を利用したマルチパス二次元トムソンの広範囲化のため往復反射ミラーを設置するための真空容器の延長部の接続が完了した.これは,レーザを真空容器内で反射することで,レーザ光強度の減少を防ぎ往復レーザパス数を増やし二次元計測を実現する際に重要な役割を果たす部分である. 英国の核融合ベンチャー企業であるTokamak Energy の大型合体圧縮ST生成実験装置ST40において,東大で研究開発が行われている可視光分光イオンドップラー温度計測システムをST40に適用して高磁場ST合体実験におけるイオン温度を計測し初期データを得た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
主要装置であるTS-6の高磁場下のため,破損していた内部コイルの入れ替え作業を行ったが,その際当初予期していなかったコイルの漏れによる真空度悪化や,端子間での放電などが起こってしまい,復旧に半年かかってしまった.さらに本研究の成果とは直接結びつかない内部ロゴスキーコイルの設置などのインフラ復旧作業に時間を費やした.また,改修のためにプローブを抜く際にプローブが破損して作り直した.また,新型コロナウイルスの影響もあり3月ごろから実験を自粛する必要があった.このため,当初予定した電子温度・密度の二次元計測が実現しなかった. 一方で,高精細二次元磁気プローブ計測によって高ガイド磁場下のリコネクションにおいて電流シート内部の磁気島の検出や,電流密度が複数のBlob状に分布していることが発見されたことや,高精細二次元可視光トモグラフィーとの同時計測によって磁気島と発光分布のピーク位置に相関がみられたこと,ST40での初期実験データを得られたことなどの進捗があった.また往復反射を利用したマルチパス二次元トムソン散乱計測のための延長真空容器の接続が完了したことで,真空容器の窓にさえぎられることなく真空容器内部でレーザが反射できるようになり,レーザパスを7往復に増やすことが実現した.この延長真空容器の部分は装置に大幅な変更を必要とする部分であり,ほかの計測にも影響を与えるためこの部分が完成したことにより本格的に実験を行うことが可能となった.初年度に大幅な装置改修を行ったことで,今後は装置構成を変更する必要がなく大幅な遅れが生じることは少ないと考えられ,3ヵ年計画の中では今後挽回可能であると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,球状トカマク実験装置TS-6での電流シート付近の二次元高精細磁場計測を行い電流シートでのBlobやプラズモイドの生成放出の加熱効果を検証するとともに,昨年整備を進めた二次元トムソン散乱システムでの計測実証を行い,二次元化低温領域でプローブの直接計測による加熱検証を行う.昨年度検討を行った速度異方性計測用の分光器開発を進める. ①昨年度発見した電流シートのBlob構造やプラズモイドの排出によるリコネクション高速化と加熱への効果を実験によって検証し,発表する.主にプラズモイド排出時のリコネクション電界の上昇についてや,その上昇率のプラズモイドの大きさとの相関について検証する.そのために積分器の数を増やしチャンネル数を確保してより高精細に計測しドップラー型イオン温度計測システムによるイオンの発光強度分布測定の結果などを合わせてプラズモイドのリコネクション高速化とそれに伴う加熱への効果を検証する. ②高精細二次元トムソン散乱計測の確立:昨年度TS-6装置で二次元トムソン計測用の,延長用の真空容器やダクトを整備し,またミラー,分光器が7台まで配置されるところまでは完了した.二次元計測を実現させたのち往復パス数を増やし,かつ現有の分光器のAPDを交換,回路改造して拡充し,分解能と計測範囲を向上させる. ③電子速度異方性計測システム開発:速度異方性計測のため分光チャンネルを追加しフィッティングするための点数を増やして前方・後方散乱の同時計測による速度異方性計測を実現する. ④電子温度・密度分布を計測し,他研究者開発済みの二次元イオンドップラー計測によりイオン温度を計測する.また,イオン流速計測用にドップラープローブを作成し,磁場(電流密度),電子温度密度,イオン温度速度同時計測より電子速度を算出し,電場による電子加速とポテンシャル形成機構を定量的に検証する.
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