研究課題
本研究は、柔軟性に優れる厚さ10マイクロメートル以下のプラスチックフィルム基板上に、電気化学計測回路であるポテンショスタットと、酵素電極からなる化学センサを集積・統合することで、人の汗に含まれる化学物質のリアルタイム計測を実現する取り組みである。最終年度である本年度においては、以下に示す2つの成果を得た。(1)ダブルゲート構造の有機薄膜トランジスタをフレキシブルポテンショスタット回路に導入することで、電流電圧変換および電圧印加の精度を1桁向上させることに成功した。前年度までに実現したフレキシブル有機ポテンショスタット回路では、有機薄膜トランジスタの特性ばらつきにより、ポテンショスタットとしての回路特性に誤差が生じていた。本年度においては、ポテンショスタットを構成するCMOSオペアンプ回路中の有機薄膜トランジスタに、閾値制御用のダブルゲート電極を設けることで、オペアンプの入力オフセット電圧の補償を行った。これにより、ポテンショスタットの電流電圧変換誤差を5%以下に低減することができた。(2)フレキシブル酵素電極上に制限膜を形成することで、化学センサのダイナミックレンジ向上の可能性を示した。前年度までに実現した化学センサでは、高濃度側における電流応答が飽和あるいは低下しており、実際の汗に含まれる代謝物の濃度範囲を満たさないという課題があった。本年度では、測定対象である化学物質の電極表面への拡散を抑制することを狙いとして、酵素電極を制限膜で被覆した化学センサを作製した。その電流応答特性を評価した結果、高濃度側のダイナミックレンジが2-3倍程度向上していることが明らかになった。一方、上述の(1)および(2)を用いて、汗に含まれる化学物質をリアルタイムに計測する取り組みについては、運動中に生じる汗滴とセンサ電極表面との接触不良という問題が生じたため、最終年度では実現しなかった。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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Organic Electronics
巻: 96 ページ: 106219~106219
10.1016/j.orgel.2021.106219