研究課題/領域番号 |
19J22091
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
木村 大海 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | 透光性セラミックス / 放射線計測用蛍光体 / シンチレーション / 光刺激蛍光 / 熱刺激蛍光 / フォトルミネッセンス |
研究実績の概要 |
これまでの放射線計測用蛍光体の材料形態には単結晶や不透明セラミックスが多く用いられているが、近年では新たな材料形態として透光性セラミックスが注目されている。透光性セラミックスは単結晶と比較して特性面での優位性について報告されているが、既往研究のほとんどは酸化物であり、ハロゲン化物、特に塩・臭・ヨウ化物透光性セラミックスの報告は少ない。そこで本研究ではセシウム複合アニオン化合物の透光性セラミックスを開発し、アニオン比率を系統的に変化させることによるバンドギャップや光学特性、シンチレーション・ドシメータ特性の変化の挙動を明らかにすることを目的とした。 今年度は放電プラズマ焼結法を用いることによりCs(Cl, Br)透光性セラミックスの開発を行った。作製条件において焼結時間、昇温速度、圧力などのパラメータを調整することにより透光性セラミックスの作製に成功した。その後Cl:Br比を25%ずつ系統的に変化させた試料を作製し、系統的に物性評価を行った。さらに発光中心として様々な添加物を導入したCs(Cl, Br)透光性セラミックスの作製および特性評価を同様に行った。一例としてEuを添加したCs(Cl, Br)透光性セラミックスの特性を調査したところ、アニオン比を変更することにより、OSLを得る際の光刺激波長を制御できることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究ではセシウム複合アニオン化合物の透光性セラミックスを開発し、アニオン比率を変化させることによるバンドギャップや光学特性、シンチレーション、ドシメータ特性を系統的に評価することを目的とした。 今年度は、Cs(Cl, Br)透光性セラミックスを開発するため、手始めに放電プラズマ焼結法によってCsCl:CsBr比が1:1におけるCs(Cl, Br)透光性セラミックス作製条件を模索し、焼結時間、昇温速度、圧力などのパラメータを調整することにより透光性セラミックスの開発に成功した。その後Cl:Br比を25%ずつ系統的に変化させた試料を作製し、透過率、フォトルミネッセンス(PL)測定、PL蛍光寿命などの光学特性から発光起源を把握し、その後シンチレーション特性としてシンチレーション発光スペクトルおよびシンチレーション蛍光寿命、残光、パルス波高スペクトルを測定し、さらにドシメータ特性としてTSLおよびOSLの調査を行った。さらに発光中心としてEuを導入したCs(Cl, Br)透光性セラミックスの開発に成功し、同様に評価した。以上のように当初の計画通り研究が進展している。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に得られた知見を活かしてCs(Br,I)透光性セラミックスの作製条件を模索する。放電プラズマ焼結法を用いた場合、透光性セラミックスは融点の6-8割の焼結温度にすると得られやすいことが私の所属するグループで経験的に分かっているため、手始めにCsBrとCsIの融点の約7割の温度である450℃で焼結条件を検討する。さらに圧力をかけながら焼結することにより緻密なセラミックスが作製でき、光の散乱源となる気孔の軽減が可能であるため、圧力と焼結温度を調整する。その他のパラメータとして焼結時間、昇温速度や雰囲気制御をすることで最も透光性の高いセラミックスの作製条件を確立する。またこれまでと同様に無添加及び発光中心を導入した複合アニオン透光性セラミックスを作製し評価する。蓄積した系統的な実験結果からアニオン比によるバンドギャップやシンチレーションおよびドシメータ特性の変化の挙動を明らかにする。さらにアニオン及び発光中心の最適な組み合わせを決定することで、優れたシンチレーション及びドシメータ特性を見出す。
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