研究課題/領域番号 |
19J22103
|
研究機関 | 日本体育大学 |
研究代表者 |
上野 弘聖 日本体育大学, 体育科学研究科, 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
|
キーワード | ランニング / 磁気共鳴画像法 / 形態的特徴 |
研究実績の概要 |
陸上競技は傷害の発生数が多い競技であり,その中でも長距離種目は,他の種目に比較し,傷害の発生率が高い種目である.本研究は,磁気共鳴画像法を用いた長距離選手の網羅的な形態分析からランニング障害発生に関わる筋・腱・骨・関節の形態的特徴を解明することを目的とした. 磁気共鳴画像法を用いて下肢骨長(大腿骨長,脛骨長,腓骨長)の長さを解析し,ランニングパフォーマンスとの関係性を検討した.その結果,脛骨長と5000m競技記録との間に有意な相関関係が認められた.加えて,大腿骨長と5000m競技記録との間に相関を示す傾向が認められた.さらに,大腿骨長と脛骨長の和も5000m競技記録との間に有意な相関関係が認められた.これらの結果から,下肢骨長がランニングパフォーマンスに関与する形態学的特徴であることを明らかとしたとともに,磁気共鳴画像法による下肢骨長の評価が長距離選手において有用な形態学的測定であることを示した. 長距離選手ならびトレーニング習慣の無い一般者において,磁気共鳴画像法を用いて膝関節伸展モーメントアーム長および大腿四頭筋体積を解析し,長距離選手と一般者の差およびランニングパフォーマンスとの関係性を検討した.その結果,大腿四頭筋体積は,長距離選手と一般者との間に有意な差は認められなかった一方,膝関節伸展モーメントアームは,一般者に比較し,長距離選手において有意に低値を示した.加えて,膝関節伸展モーメントアームが短いほど,5000m競技記録が優れている有意な相関関係が認められた.これらの結果から,長距離選手は,膝関節伸展モーメントアームが特徴的に短く,短い膝関節は優れたランニングパフォーマンスの獲得に関与する形態学的特徴であることを明らかとした.今後,長距離選手の特徴的な膝関節伸展モーメントアーム長が,主要なランニング傷害である膝関節障害の発生に関与するのか検討を進める.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,形態的特徴とランニング障害の発生の関係性を検討するために,磁気共鳴画像法を用いた下肢骨長や膝関節モーメントアーム長などの評価法を確立した.これらの研究成果の一部は,Journal of Human Kinetics誌に発表し,XXVⅡ Congress of the International Society of Biomechanicsにおいて学会発表を行った.加えて,形態学的特徴とランニング障害の関係について後ろ向き調査を進行している.現在長距離選手10名(全50名程度を予定)において磁気共鳴画像法による形態測定ならび過去の傷害に関するアンケート調査を実施した.なお,後ろ向き研究の対象者については1年間の傷害発生を追跡調査し,ランニング障害の発生と形態的特徴の関係を前向きに調査を行う.以上の研究実施状況から,進捗状況をおおむね順調に進展していると評価した.
|
今後の研究の推進方策 |
1. 磁気共鳴画像法に形態測定ならび過去のランニング障害に関するアンケート調査を引き続き実施する. 2. 得られた磁気共鳴画像を解析し,形態的特徴と過去のランニング障害発生の関係を検討する. 3. 測定を実施した長距離選手を対象に,1年間のランニング障害の発生状況を追跡調査し,形態的特徴とランニング障害の発生の関係性について前向きに検討を行う.
|