長距離走は、走行距離が長いことに関連して、腱傷害や疲労骨折を含むランニング障害の発生率が高い。このランニング障害の発生には、力の生成や伝達を担う、筋・腱・骨・関節の形態的特徴が密接に関わっている、しかし、形態的特徴と傷害発生の関係を検討した研究は極めて僅かである。そこで、本研究は、MRIを用いた長距離走選手の網羅的な形態的分析からランニング障害発生に関わる筋・腱・骨・関節の形態的特徴を解明することを目的とした。 新型コロナウイルス流行の影響を受け、長距離走選手を対象とした磁気共鳴画像の測定を実施することができなかった。そこで、当該年度はこれまでに得られていた研究データの論文投稿ならび補助的に測定していたデータの解析および論文投稿を中心に研究活動を遂行した。陸上長距離選手が一般者に比較し、特異的に膝関節伸展モーメントアーム長が短く、膝関節伸展モーメントアーム長が短いほどランニングパフォーマンスが優れていることについて国際学術誌へ論文発表を行った。また、補助的に測定していた5000mレース中のステップ変数の分析から、ストライド長と接地時間のレース前半から後半にかけての変化率がレースタイムを反映する指標であることを明らかとし、国際学術誌へ論文発表を行った。さらに、補助的に測定していた陸上長距離選手のリバウンドジャンプ分析から、リバウンドジャンプ指数がレース中の接地時間を反映することを明らかとした。これらの研究成果はランニングによる疲労がステップ変数やリバウンドジャンプ指数に影響を及ぼしている可能性を示唆しており、今後これらの指標を用いることで、より長期的に陸上長距離選手のコンディション状態をモニタリングし、ランニング障害発生との関与について検討することが必要である。
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