研究課題/領域番号 |
19J22111
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
賀川 恵理香 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | パルダ / ヴェール / 農村 / 南アジア / パキスタン / 女性 |
研究実績の概要 |
本研究は、都市と農村を横断する女性たちのパルダ実践を明らかにすることを目的としている。パルダ(pardah)とは、南アジア地域に広く存在する性別規範のことであり、狭義には女性のヴェール着用、広義には男女の生活空間の分離を指す。 今年度は前年度に引き続き、2020年1月22日から約11ヶ月間、パキスタン、パンジャーブ州ナーローワール県の農村を拠点として、農村部における女性たちのパルダ実践に関する参与観察及びインタビュー調査を実施した。調査にあたっては、空き家の一室を借りて村内に住み、住民たちとの関係性を構築した。そのうえで、調査村の住民・世帯データを収集し、全103世帯の女性メンバー、男性メンバーそれぞれにパルダに関する半構造化インタビューを行なった。さらに、調査村から都市部の大学へ進学した女性たちに着目し、出身村と進学先の都市での振る舞いの違いについて調べた。聞き取り調査の結果からは、以下の4つの示唆が得られた。 ①パルダの解釈方法には、年齢、性別、カースト、経済状況、教育的バックグラウンドなどの様々な要素が関係していること、②農村部と都市部におけるパルダ実践には、一人の女性においても差異があるということ、③調査村におけるパルダの実践方法には、装いの方法、振る舞いの方法の両方において時代的な変遷があること、④パルダ実践におけるヴェールの形状の変化には、調査村の周辺都市との交流が背景となっていること。 今回の長期滞在においては、村落部における人々の生活実践をはじめとして、村内で起こる揉め事やその解決方法、そして、パルダの実践と実際の生活の結びつきなど、様々なレヴェルの物事を内側から見つめることができた。申請者は村内に住み込んでいたため、住民たちとの直接的なコミュニケーションを取ることが可能であり、そこで得られたネットワークは何事にも変えがたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、現地調査を通して現代パキスタンにおけるパルダの実践方法を明らかにすることを目的としている。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大により、現地調査の間も十分に調査を行うことができず、さらに現状としてパキスタンへの再渡航が難しい状況にある。よって、当初予定していた研究計画にやや遅れをとっている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究においては、現地で収集したインタビュー資料や文献資料を整理し、論文投稿や研究発表においてデータを活用することができるようにする。データ整理を進めるうえで、追加のデータが必要なことが判明した場合、Whatsappなどのアプリケーションを利用し、オンラインでの聞き取り調査も予定している。しかし、本研究はあくまでも現地調査を行うことを前提としているため、新型コロナウイルスの感染状況を注視しつつ、再び現地調査を実施することを視野に入れて今後の研究を進めていきたい。
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