研究課題/領域番号 |
19J22148
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
澤井 恵 北海道大学, 生命科学院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | ドライアイ / 脂質 |
研究実績の概要 |
HEK 293T細胞に脂肪酸伸長酵素ELOVL4,脂肪族アルコール産生酵素FAR1と共にAWAT1あるいはAWAT2を過剰発現させ,極長鎖ワックスエステルを産生させることができるかを調べた。その結果,AWAT1およびAWAT2のどちらを過剰発現させた場合でも,極長鎖ワックスエステルを産生させることに成功した。続いて生体におけるAWATの寄与について調べるため,Awat1および2単独ノックアウト(KO),Awat1 Awat2 二重KO(DKO)マウスを作製した。作製したマウスのうちAwat2 KOマウスおよびAwat1 Awat2 DKOマウスは,野生型マウスが通常ほとんど行わない瞬目を頻繁に行っており,Awat1 KOマウスに関しても何度か瞬目を行っている様子が観察された。LC-MS/MSを用いてマイバム脂質中の極長鎖ワックスエステルを測定したところ,Awat2 KOマウスおよびAwat1 Awat2 DKOマウスの極長鎖ワックスエステルは消失していた(学会発表1,2)。マイバム脂質にはワックスエステル以外にもワックスジエステルや(O-アシル)-ω-水酸化脂肪酸(OAHFA)といったワックスエステル類縁体が存在するため,それらの分子についても測定を行った。その結果,Awat2 KOおよび Awat1 Awat2 DKOマウスではワックスジエステルが野生型マウスの1割程度にまで減少していた。一方OAHFAについては, Awat2 KOで野生型の6割程度まで減少していたのに対し,Awat1 KOでは野生型の3割程度,Awat1 Awat2 DKOで野生型の2割程度にまで減少していた。したがって,ワックスエステルやワックスジエステルの産生に対しAwat2が主要に関与する一方,OAHFAの産生に対してはAwat1の寄与が大きいことが明らかになった(学会発表2)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では本年度はKOマウスの系統樹立を目標としていたが,系統樹立が予想より早く完了し,KOマウスマイバム脂質の組成解析を前倒しで行うことができた。研究準備期間中に野生型マウスマイバム脂質の組成解析と解析法の検討を入念に行っていたため,KOマウスが入手できた後の解析を速やかに行うことができた。また,そのような準備期間の解析により,極長鎖ワックスエステルに加え,当初注目していなかったワックスエステル類縁体の測定も行え,Awat1/2の更なる機能を見出すことができた。細胞やin vitroの活性測定については,当初予定していたプロテオリポソームや放射性同位体ラベルトレーサー実験といった方法では活性を評価することができなかったものの,上記測定法の検討により種々関連因子の過剰発現細胞とLC-MS/MSを用いて活性を評価することに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
作製したKOマウスについて,ドライアイ表現型に関する詳細な解析を行い,Awat1/2のドライアイ防止における役割を明らかにしていく。マイバム脂質は非常にユニークかつ膨大な脂質分子種を含む。まだまだ未知の脂質分子が眠っている可能性もあるため,詳細な脂質組成解析を今後も続けていく。また,Awat1/2については皮脂腺においても発現していることが報告されているため,KOマウスの毛や皮膚に異常がないかについても,今後詳細に解析していきたいと考えている。
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