研究実績の概要 |
今年度は,作製したAwat1および2単独ノックアウト,Awat1 Awat2 二重ノックアウトマウス(A1 KO, A2 KO, DKO)の眼球表面やマイボーム腺における詳細な表現型解析,および細胞系における解析系の検討を行った。野生型マウス(WT)がほとんど瞬目しないのに対し,KOではそれぞれ瞬目回数が有意に増加していた。眼球表面からの蒸散量はA2 KOおよびDKOで有意に亢進していた。続いて各マウスよりマイボーム腺を摘出し,実体顕微鏡下で観察した。WTでは体温で透明・液状であるマイバムが,A1 KOでは半固体状になっており,A2 KOおよびDKOでは完全に固化していた。また,A2 KOおよびDKOマイボーム腺は肥大化していた。ヘマトキシリン/エオジン染色によってマイボーム腺の詳細な構造を観察したところ,A2 KOおよびDKOのマイボーム腺導管が拡張していた。A2 KOおよびDKOでは固化したマイバムが排出されないため,導管内部にまでマイバムが蓄積し,マイボーム腺が肥大化したと考えられる。昨年度検討した細胞解析系を用いてヒト/マウスAWAT活性の比較を行うため,初めにマウスAwat1およびAwat2のクローニングを行った。更なる検討の結果,ELOVL4過剰発現とエルカ酸添加の系よりも,ELOVL3過剰発現と分岐鎖脂肪酸添加の系の方が感度良く解析できることがわかった。そこで,HEK293T細胞にELOVL3,FAR1と共にヒトAWAT1/2あるいはマウスAwat1/2を過剰発現させたところ,全てのAWATがWE合成活性を示した。A1 KOではWEが減少しておらず,A2 KOでほぼ消失していたことから,少なくともマウスAwat1はマイボーム腺においてWE産生に関与していないと考えられる。この問題点を解消するため,今後は細胞種を変更するなどして条件検討を行っていく予定である。
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