タイプ2ω,1ωおよび2αワックスジエステル(WdiE)を区別できる測定法を確立した。その測定法により,Awat1 KOマウス(A1 KO)およびAwat2 KOマウス(A2 KO)で三価不飽和タイプ1ω WdiEが減少していることが明らかになった。一方,二価不飽和についてはA1 KOで減少していたのに対し,A2 KOでは減少していなかった。これより,Awat1とAwat2はマイバム脂質中のタイプ1ω WdiE産生に対しそれぞれ異なる寄与を示すことが明らかになった。一方,タイプ2α WdiEについてはA1 KOおよびA2 KOいずれにおいても減少しておらず,Awat1とAwat2が産生に関与しないことが示された。涙液層破壊時間(BUT)を測定すると,A1 KOおよびA2 KOいずれにおいてもBUTが短縮しており,涙液層が不安定化していることが明らかになった。角膜障害を調べると,A2 KOでスコアが上昇していた。マイバムの融点測定を行うと,いずれのKOマウスでも上昇しており,特にA2 KOでは大幅に上昇していた。これより,極長鎖ワックスエステル(WE)がマイバムの適切な融点維持に必須であると考えられる。Awat1 Awat2 DKOマウス(DKO)の毛が濡れてから乾くまでの時間は延長していた。皮膚切片では皮脂腺が拡大している様子が観察された。しかし,DKOではWE等の脂質は減少しておらず,むしろ増加していた。DKOにおいては皮脂産生が過剰になっており,Awat1やAwat2が間接的に正常な皮脂産生の維持に関与している可能性がある。また,極長鎖WEを構成する極長鎖アルコールの産生酵素遺伝子Far2 KOマウスのWdiE測定についても行った。その結果,Far2 KOマウスではいずれのWdiEも消失しており,Far2が3種の極長鎖WdiEの産生を担うことが明らかになった。
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