2022年度は日本列島の梯子獅子伝承地での民俗調査や歴史資料調査、各神社での梯子獅子ならびに関連芸能の実見などを実施した。また、これまでの研究成果の発信として口頭発表・講演会(2件)、論文発表(1篇)を行なった。 梯子獅子に関する民俗調査・歴史資料調査は、岩手県遠野市、千葉県九十九里町、兵庫県姫路市・小野市・加西市、徳島県阿南市、和歌山県和歌山市、愛知県知多市にて行なった(7~12月)。聞き取り、芸能の練習見学、文献資料収集などの調査を行ない、各地域の伝承や伝播に関する資料など多岐にわたる情報を得ることができた。また、今年度は兵庫県小野市、徳島県阿南市、和歌山県和歌山市、愛知県知多市にて梯子獅子を実見した。未だ新型コロナウイルス感染症により多くの地域で芸能の中止や祭礼縮小がなされていたが、制約のある中で可能な限り調査を進めることができた。 さらに梯子獅子の関連芸能・神事として、高所や櫓上で行なわれる芸能・神事に関する調査を茨城県、岐阜県、愛知県、長崎県において実施し、各地の伝承や櫓の造り、芸の所作などから梯子獅子との関連性を考究した。 本年度は本研究課題の最終年度であることから、冒頭で述べたように複数の成果発信を行なった。12月には兵庫県福崎町からの依頼で、日本における梯子獅子の分布や特徴をテーマに文化講座を実施した。本講座は日本民俗学会研究奨励賞・福崎町賞受賞記念として一般を対象に開催された講座であった。開催地の播磨地方は梯子獅子の伝承数が日本で最も多いことから、多くの参加者に興味を持ってもらえたと実感している。 また、論文発表について、本報告書には1篇のみ記載したが、2023年中にはさらに論考1篇、エッセイ1篇がそれぞれ論集に掲載・発行されることが決定している。このほかにも、本研究課題に関連する論考を複数執筆中であり、研究成果の公開を順次進めていきたい。
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