研究実績の概要 |
本研究の目的は、銀河と超巨大ブラックホール (Supermassive Black Hole; SMBH) の共進化の物理的起源の解明である。前年度に続き、銀河同士の合体段階で急速に進化中の種族である超/高光度赤外線銀河84天体に着目し、SMBHへの質量降着機構を調べた。同研究室が開発した最新のX線モデルを適用することに加え、5つのX線衛星による約20年分の観測データを系統的に解析することで、銀河とSMBH間の質量輸送に関わるトーラス構造の物理的描像を得ることに成功した。特に合体末期では、激しい質量降着率によりSMBHが進化するだけでなく、輻射圧による莫大な質量輸送機構(アウトフロー)により銀河進化が制御されることも示唆された。本成果は学術論文として出版されている (Yamada et al. 2021, ApJS, 257, 61)。 一方で、現状でのアウトフローの性質を導出する手法が、輝線/吸収線の青方偏移量の測定などに限られており、アウトフローを検出できた例のほとんどは合体末期の銀河のみであった。アウトフローの成長過程を正しく評価するには、新たな手法を開発し、他の合体段階におけるアウトフローも含めて系統的に調査することが不可欠である。そこで我々は、X線解析で使用したトーラスモデルの構造に加え、アウトフローのダスト成分と考えられるポーラーダストの構造も考慮した赤外線放射モデルを開発した。これを多波長放射モデルに実装し、同じ84天体を対象にX線から電波までの多波長データ解析を行い、ポーラーダストの性質に強い制限を与えた。その結果、合体が進むにつれてポーラーダストの光度は増加するが、一方でダストの平均温度は減少する傾向を初めて発見した。この結果は、合体が進むにつれてアウトフローが発達し、銀河スケールにまで広がったポーラーダストを形成していく描像を支持する。本成果も執筆中であり、ApJSに投稿する予定である。
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